ホンダ「レジェンド」レベル3運転は何がスゴいか 高速道路で乗ってわかった自動化技術の実力

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レベル3稼働時には映像の鑑賞が可能(写真:ホンダ)

Honda SENSING Eliteでは、連続自動操舵「カテゴリーE」を活用して、自車のナビゲーションで目的地を設定している際には、高速道路の本線を走行中に出口車線へと車線変更を行うことも可能だ。

前述のとおり「You have (control).」→「I have (control).」というやりとりがある。たとえば航空機のコクピットでは、機長と副操縦士との間で頻繁に交わされている。これにより操縦桿を握る人物が明らかとなり、責任の所在が明確化され安全な航行が期待できる。ご存知の読者も多いことと思う。

Honda SENSING Eliteを搭載したレジェンドでは、こうしたやりとりが運転席で行われる。実際には無言でのやりとりで、ドライバーが心の会話を交わす相手は副操縦士ならぬHonda SENSING Eliteのシステムだ。

自動運転開発における「競争領域」

ちなみに、2021年4月8日に発表されたトヨタ「MIRAI」とレクサス「LS500h」が搭載する高度運転支援技術「Advanced Drive」では、ドライバーの目視がシステムとの意思疎通ツールとして用いられた。

この先、レベル3以上では、こうした人と機械の意思疎通ツールとして、人間工学に則ったHMIが次々に実装されていく。ここは自動運転開発における「競争領域」だ。

④自動運転モード稼働中のTORで述べた、Honda SENSING Eliteが繰り広げる安全に関する思考のループは、まるでアイザック・アシモフのSF小説『われはロボット』に引用される「ロボット工学の三原則」のようだ。小説ではいかにもの展開だったが、Honda SENSING Eliteにとっての現実は運転の主体を人かシステムか明確にするために用いられた。よってわかりやすく、発展性もある。

レベル3技術が正常に稼働している状態では、フットフリー&ハンズフリーに加えて、アイズフリー(一定条件下で視線による安全確認を解放する)が実現し、それは法律のうえでも許される。この「~フリー」という言葉はとてもキャッチーだ。よって現状ではそこが大きく報道されているが、じつは今回のレジェンドの素晴らしさは、その領域に留まらない。

公道においてドライバーとシステム(Honda SENSING Elite)が協調し、“安全な運転操作の継続”というタスクを共に成し遂げる世界初の市販車であること。これこそが自動車史に名を残す偉業であると筆者は考える。

世に放たれる100台(法人リース販売のみで、完売間近)のHonda SENSING Eliteは、ドライバーとともに安心で安全な移動を積み重ねる。その蓄積データはサーバーで厳重に管理され、やがて技術者の知見となっていく。

じつに地道だが、この開発プロセスにより将来的には誰もが等しく移動の自由を手にできる真の自動化社会が見えてくる。Honda SENSING Eliteに試乗して、そんな想いを抱いた。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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