整形外科でわからなかった「腰痛」予想外の原因 長引く痛みの原因は帯状疱疹かもしれない

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帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスです。これは水ぼうそうの原因ウイルスのこと。最初に感染した時には水ぼうそうとしてあらわれます。水ぼうそうが治まったあと、このウイルスは体からいなくなるわけではなく、皮膚にできた湿疹から神経を伝わって後根神経節と呼ばれるところに潜んでいます。

ふだんは悪さをすることなくおとなしく潜んでいますが、最初に水ぼうそうを起こしてから何年も経ったあと、ストレスや疲れなどでウイルスに対する抵抗力が落ちると、再び活性化して帯状疱疹を引き起こすのです。そのため、帯状疱疹に対しては、抗ウイルス薬を使った治療が中心になります。

治療が遅れれば後遺症が残りやすくなる

帯状疱疹という病気は、Eさんのように「肋間神経痛」や「ただの腰痛」と判断されて整形外科で見逃されることが多いように感じます。私のクリニックだけでも、Eさんと同じような方が何人もいらっしゃるのです。

肋間神経痛やただの腰痛と診断されてしまうと、Eさんのように痛み止めや湿布を処方されて様子を見るという方針になりやすいのですが、それでは、ウイルスが原因の帯状疱疹には効きません。そして治療が遅れれば、後遺症としての痛みが残りやすくなります。

皮膚の症状が治まったあとに痛みだけが残ってしまうことを「帯状疱疹後神経痛」と言います。3カ月後で7~25%の人が、6カ月後でも5~13%の人が、痛みが続いているという報告もあるほどなので、決してまれではありません。

痛みを残さないようにするには、できるだけ早く抗ウイルス薬を使った治療をはじめて、体内でなるべくウイルスを増やさないことと、炎症を最小限にとどめることが肝心です。つまり、帯状疱疹であることをできるだけ早く突き止めて、適切な治療を行うことが大事なのです。

ところが、肋間神経痛やただの腰痛に間違われて治療が遅れてしまうことがあります。それはなぜでしょうか。

帯状疱疹の典型的な症状である帯状の発疹が出てくるとわかりやすいのですが、多くの帯状疱疹は痛みや皮膚の違和感からはじまります。

見た目の変化はあまりないまま、ピリピリ、チクチクとした痛みや皮膚の違和感が生じ、数日から1週間ほど経って赤い湿疹があらわれはじめ、やがて痛みが強くなるとともに盛り上がった赤い発疹や水ぶくれが帯状にあらわれるという経過が、一般的なのです。つまり、特徴的な発疹が出る前に、ピリピリとした痛みだけが出ることが多いのです。

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