アメリカの雇用が予想外に回復していない「意味」

4月の雇用統計は楽観論を完全に裏切る内容に

5月7日発表の政府統計によると、4月の雇用者数(非農業部門)は前月に対し26万6000人しか増えなかった(写真:Paul Frangipane/Bloomberg)

報道の仕事にはちょっとした秘密がある。最高裁判所の判決や著名人の死など、ある程度予想される出来事については記事の大部分を事前に書いておくか、別バージョンの記事をいくつか用意する。ニュースが発生したらすぐに記事を配信できるようにするためだ。

そして、アメリカの4月雇用統計が急激な経済の回復を示していると解説した記事の予定稿はゴミ箱行きとなった。内容が完全に間違っていたからである。

市場予測を大幅に下回った

5月7日発表の政府統計によると、4月の雇用者数(非農業部門)は前月に対し26万6000人しか増えなかった。「100万人前後」の市場予測を大幅に下回る結果だ。失業率は実際、6.1%へと若干悪化した。

詳細はプラスとマイナスが入り乱れている。人材派遣が11万1000人減と大幅に落ち込む一方で、レジャー・接客業の雇用は33万1000人増と堅調に伸びた。

というわけで、有力な予測機関がなぜ4月の雇用動向をことごとく読み誤ったのか、理由の解明にはしばらく時間がかかるだろう。4月の雇用者数は小幅にしか伸びず、好調な他の経済指標とは矛盾する動きになっている。これが統計上の「あや」にすぎないのか、それとも現実なのかを見極めるのにも、もう少し時間がかかりそうだ。

だが、雇用者数がすぐに堅調な成長軌道に戻らなければ、かなりの懸念材料になる。足元では「雇用が急速に回復し、アメリカ経済は短期間で潜在能力をフルに発揮できる状態に戻る」という楽観論が支配的だが、アメリカの雇用者数は今も2020年2月の水準を820万人も下回る状況にある。

次ページこのペースでは経済の完全復活はかなり先に
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