就活生を翻弄する「コミュ力」その意外な正体 「サークルの代表経験」が武器にならない理由

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「よく『サークルの代表をしていて人脈が広い』とか自慢げに語る学生がいますが、趣味が合う相手と仲良くなるのは当たり前。それよりも、自分と考えが違う相手と冷静に意見を戦わせることができるか、対立と葛藤から新しいアイデアを生み出すことができるか、というワンランク上のコミュ力を期待しています」

この素材メーカーは、「自分と考えが違う相手と意見を戦わせること」や「対立と葛藤から新しいアイデアを生み出すこと」を求めています。

なぜ学生たちは翻弄されるのか?

ここで就活生の読者は、「定義していない要素で採否を決めるって、だまし討ちじゃないか」と思われたでしょうか。そうでもありません。まったく無関係なことではなく、その企業のビジネスや求める人材像と関連したコミュ力を見ているからです。

先ほどのコンサルティング会社のビジネスでは、顧客から真の経営課題を探り出すことが大切ですし、コンサルタントには顧客から信頼される人間性が求められます。「相手の真意を引き出すための問いを発する力」と「話題に深みがあるかどうか」はこれらと直結しています。

上の素材メーカーでは、20代の頃から新事業開発など責任ある仕事を任せており、年上の上司でも社外の相手でも臆せず自分の考えを発信できる人材を求めています。これが「自分と考えが違う相手と意見を戦わせること」や「対立と葛藤から新しいアイデアを生み出すこと」に繋がってくるわけです。

企業が求めるコミュ力は、最低限必要なものはかなり共通しています。しかし採否を分けるポイントは企業によって違うようです。「最も大切なコミュ力の内容は、企業のビジネスや求める人材像で決まってくる」というのが、今回の調査からわかったことです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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