豪州出身34歳の彼が京都でビール造りに励む訳 教師として来日したが気づけば夢を叶えていた

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「当時、ブルワーは私1人で、月3000リットル造っていました。もちろん最初は嬉しかったのですが、働きどおしで非常に疲れました。スタッフは全員仲がいいんですが、このときはさすがに

『もうあかんわ!!』

って、やめそうになっていました。シャンパン・プロブレム(戦争や貧困などの大きな問題ではないが、それでも解決しなければならない個人的問題。ジレンマ)でしたね。」

お店のバックヤード(筆者撮影)

順調だったのでブルワーを2人体制に変更した。また、2号店を作ろうという話も出た。

2号店の話が現実味を帯びてきたころ、新型コロナが流行してしまった。

「お客さんは一気に減りましたね。とくに外国からの観光客がほとんどなくなってしまったのは痛かったです」

最盛期は1人で月3000リットル造っていたが、現在は2人で月1000リットルを造るにとどまっている。

「今は身体的には楽ですけど、この状態があと1年も続いたらお店を閉めるしかなくなりますね。ビールを飲みすぎた後に用を足すみたいにお金がジャバジャバと出ていっていますね(笑)。

とってもバランスが難しいです。

ただ、新型コロナは1人の問題じゃないですからね。あまり文句も言えないですが……」

インタビューをさせてもらったときにはまだお店は営業していたが、4月末の緊急事態宣言に合わせて休業することになった。

現在は、オンラインショップでビールを販売するのに力を入れている。

偶数月の下旬に旬のビールを6本、10%オフの値段で届けてくれる定期便サービスもある。ビール好きな人にはとても嬉しいサービスだと思う。

35歳までに帰国を考えていたが…

ビールを注ぐトムさん(筆者撮影)

「正直、今後どうするかは模索中です。新型コロナがビール業界にどれくらい影響があるかわかるのもこれからだと思います。

個人的には35歳までにはオーストラリアに帰ろうって思ってたんです。でもよく考えたら、35歳って来年なんですよね(笑)。京都ビアラボもあるし、もう少しいようかなあとも考えています。

ただ、いずれはオーストラリアに帰ります。オーストラリアの田舎の海の近くに、ブリューパブを作りたいですね。サワーエール(酸味の強いビール)の専門店とかがいいかな。海のそばで、爽やかなサワーエールを飲むって、最高ですよ!!」

と、トムさんは笑顔で語ってくれた。

コロナ禍が去って、お店が通常に営業するようになったらまたぜひ足を運ばせてもらいたいと思った。

クラフトビールを飲んだいちばんの感想は

「自分にとって親しい人に飲ませたくなるビールだな」

というものだった。

オーストラリアのクラフトビール名人が日本にいる間に、ぜひ味わってもらいたい。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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