あのゴールデングローブ賞が消滅危機にある訳 スカヨハも我慢の限界!投票団体の超差別体質

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HFPAは「自分たちはレイシストではない」と言い訳したり、「真剣に改革に挑む」と宣言をしたりした。しかしその後にも、8回会長を務めたことがある南アフリカ出身の会員が「Black Lives Matter」を批判する記事を拡散。

もうひとりの南アフリカの会員は、オスカーのヴァーチャルバックステージ会見でダニエル・カルーヤをレスリー・オドム・Jr.と勘違いした質問をするという失態をおかす。グローブは、そのたった2ヶ月前にカルーヤに同じ映画で助演男優賞を与えたばかりだ。自分たちが賞をあげた相手の顔すらもう忘れたのか? 黒人はみんな一緒に見えるとでもいうのか?

彼らの評判がますます落ちていたところへ、HFPAは、この記事の最初に書いた、抜け穴を作る気が見え見えの改革案を発表したのである。

ゴールデングローブ賞は消滅間近

そうやって、アカデミー賞、エミー賞、グラミー賞の次に知名度が高いと言っていいグローブが存続の危機にさらされる中、毎年グローブの翌週に授賞式を放映する放送映画批評家協会(Critics Choice Association: CCA)が、動き始めた。これまでアメリカとカナダの媒体に書いている批評家に限っていたのを改め、外国の媒体に書いている批評家にも資格を与えることにしたのである。

CCAの授賞式もグローブと同様、丸いテーブルが並ぶ、いわゆる宴会形式。グローブ同様、映画とテレビ両方の部門があり、多くのスターが出席する。つまり、似たような授賞式番組が2週続けて放映されてきたのだ。違いはグローブが外国人記者、CCAが国内記者ということくらい。

そこへきてCCAが外国人記者も加え、一方でグローブはボイコットが続いた末に来年お休みとなれば、もはやグローブの居どころはなくなる。個人が受ける利益を最大限にするため、常に80人か90人あたりに会員数を絞ってきたHFPAと違い、現役で仕事をしている450人の会員をもつCCAは、それだけ信頼度も高い。

コロナのためヴァーチャルで行われたこともあり、今年のグローブ授賞式の視聴率は前年から63%も落ち、過去最低だった。それを最後に終わるのだとしたら、納得でもあるし、惨めでもある。果たしてグローブはこのまま消えるのか。それとも、これまでもあらゆる批判を受けながらサバイバルしてきた彼らは、今回もまた不死鳥のように蘇るのか。今後の行方を、セレブたちも注視している。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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