あのゴールデングローブ賞が消滅危機にある訳 スカヨハも我慢の限界!投票団体の超差別体質

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では、どうして突然こんなことになったのか? すべての始まりはL.A.在住ノルウェー人フリーランス記者シャスティ・フラー(Kjersti Flaa)が訴訟を起こしたことにある。

訴訟の理由は、HFPAは非営利団体であり、本来はそのコミュニティ全体に利益を与えるものでなければならないのに、彼らは徹底して扉を閉ざし、利益を享受する人が増えるのを防ごうとしているから。HFPAに入っていなくても取材の機会はもちろんあるが、独自の枠があるHFPA会員は、機会がずっと多い。とくに小さな市場に向けてレポートしている記者は、もともともらえる機会数があまり多くないので、その差はとても大きい。

だが、HFPA会員は、自分の国から新しい人が入ってくるのを意地悪な手を使い、なんとしても阻止しようとするのだ。訴状にはほかに、非営利団体であるにもかかわらず、HFPAの会員はあらゆる名目で不当に高額と思える金銭を受け取っていることも指摘されている。

最初に明かしておくが、筆者はフラーの友人で、彼女が訴訟を考えていることも、1年以上前から聞いていた。いざ訴訟を起こしてからは、ほかのL.A.在住記者仲間とともに、一丸となってフラーをサポートしてきている。「L.A.TIMES」がフラーの訴訟をきっかけにHFPAについて取材を始めた時も、我々仲間たちは大いに協力した。

会員の中に「黒人はゼロ」

そして、「L.A.TIMES」が半年かけて調べ尽くしたその記事は、今年のゴールデングローブ授賞式の1週間前の2月21日、ついに発表され、そこから嵐が巻き起こったのである。

2部構成で、2日にわたって掲載されたその記事には、HFPAが会員にあらゆる名目で支払う金額は年々増加しており、2020年6月までの1年間には総額200万ドル以上が支払われたという事実が書かれていた。

会員数はおよそ86人(およそ、というのは、途中亡くなった人がいるため)なので、平均するとひとり2万3000ドルももらっていることになる。アカデミー賞に投票する映画科学芸術アカデミーは、会員にこのような金銭的報酬は与えてない。あらためて言うが、HFPAは非営利団体である。

また、批評家の評判が悪い『エミリー、パリへ行く』が今年のグローブで2部門候補入りした裏には、会員がパリに招待され、1泊1400ドルもするペニンシュラホテルに泊まらせてもらえていたことも関係しているのではと書かれていた。

だが、もっと注目を集めたのは、会員の中に黒人がひとりもいないという事実だ。さらに、HFPAは、昨年、ジョージ・フロイド事件で「#Black Lives Matter」が盛り上がった時、ダイバーシティコンサルタントを雇うかどうかの話が出たにもかかわらず、投票で却下していたこともわかった。

「#OscarsSoWhite」批判を受けてアカデミーがこの5年間、積極的に多様化をはかり、結果を出している中で、いまだに平気でこんなことをしていたとはと、人々は心底呆れたのである。

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