鉄道の減便「需要読み違え」招いた行政の誤算 通勤の抑制には一般企業の協力が不可欠だ

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ダムに例えるならば、水がダムの高さを越えるまでは災害ではない。しかし、越えてしまった瞬間、それは災害になる。ラッシュのピークに輸送力不足をきたすと、ホームに人があふれて危険な状態が生じ、列車の運行に支障をきたす可能性も高くなって、さらなる悪循環に陥る。だからこそ、鉄道に流れ込む利用客数が減っていないのに、ダムの高さを低めるがごとく、輸送力をカットをしてはいけないのだ。

「密」を減らす目的ならば、減便ではなく、むしろピークの前後に増発を行い、通勤客を誘導するほうが効果的と考えられる。行政が要請するなら、こちらではないかと思う。ただし、これは車両や乗務員が確保できなければ難しい。

留置場所の問題があるが、車両については検査期限切れで廃車予定のものを、検査・補修費用を自治体などが補助して延命させ、確保することもできよう。リモートワークがいっそう普及し、通勤通学客の絶対数が減少するまでの暫定措置だ。

鉄道に求められる難しい舵取り

問題は「人」のほうかと思われる。都営地下鉄大江戸線では、乗務員に新型コロナウイルス感染者が発生したために、運転士が不足して一時、減便を余儀なくされた。鉄道会社が怖れている事態がこれだ。

京急線は一部区間で運転取りやめ。都営地下鉄は大江戸線以外の路線で通常運行だった(筆者撮影)

それゆえに予備要員を確保しておけるよう、事前の減便を行っている例もある。その中で増員を伴う施策は難しいとは考えられるが、思い切った日中の列車の減便などでまかなえないだろうか。長い目で見れば、少子高齢化と労働人口の減少もにらんで、ワンマン運転化、自動運転化を促進させる手段はあるか。

いずれにせよ、少子高齢化に加えて、ネガティブな要素として新型コロナウイルス感染症流行が加わり、鉄道会社には社会のインフラとしての、難しい経営の舵取りがさらに求められる。すぐ解決できる課題ではないと思われるが、社会動向を見誤らないような行政サイドの判断も不可欠であろう。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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