鉄道の減便「需要読み違え」招いた行政の誤算 通勤の抑制には一般企業の協力が不可欠だ
そのためJR東日本は翌5月7日の減便を取りやめ、通常通りの平日ダイヤで運転すると、5月6日午後になって発表した。
はっきり言えば、社会の動向を読み間違えたこの減便は、失敗であった。首都圏各社とも、これは国、関係自治体の要請を踏まえたうえでの施策としている。つまりは自主的な対応ではない。
連休前後とは言え、平日には日常に近い数の通勤客があるはずと考えた大手各社は、最低限の減便で済ませた感がある。しかしJR東日本は最大の鉄道会社だけに、おつきあいにとどまらない、他社へ「範を垂れる」減便を行政から求められたのではあるまいか。そう邪推したくもなる。
なお、東京都のお膝元の都営地下鉄が他社と同じ4月27日付で発表した計画では、大江戸線のみが減便対象であった。利用客が多く、他社と相互直通運転を行っている浅草線、三田線、新宿線については変更なしとしている。
減便だけでは移動抑制できない
今回は、ゴールデンウィーク中の平日は有給休暇を取得する者が増えるなど、通勤客が減る特殊な条件ゆえ大丈夫と考え、減便が要請され、それが受け入れられたのだろう。ただJR東日本の減便規模は、少し大きすぎた。
まず、ラッシュ時の通勤通学客の絶対数を減らす、または前後の時間帯に分散させる。そして、ピークを崩して低くする努力こそ先である。それは鉄道会社だけでできることではない。
通勤通学目的地である一般企業や学校が始業時刻を大幅にずらすなど、協力する体制が不可欠だ。必要な外出であり、都市部では鉄道以外に頼れる確実な交通機関がないから列車に乗るのであって、「列車を減らせば、外出が抑制される」という構図はありえない。
やはり大都市圏の鉄道は、朝夕の通勤通学輸送のためにある。いかにオフピーク通勤やリモートワークが進み、ラッシュ時の輸送量が減ろうと、需要のピークが存在する以上、それに適合させた車両や線路設備、ひいては列車本数は、いかなる場合でも確保しておかねばならない。それが装置産業である鉄道の宿命だ。うかつに減らせるものではない。
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