幸せな組織をつくれる人と不幸にする人の決定差 面倒な仕事に挑み生産性高める為に必要なこと

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仕事では、工夫をしたり、人に頭を下げたり、未経験のことに背伸びして挑戦できるかどうかで、結果は大きく異なってくる。主観的な幸福感やいいムードは、このような工夫や挑戦を行うための「原資」となる精神的なエネルギーを与えていたということだ。逆に、幸福感が低くなって、このような精神的なエネルギーや精神的原資が低下すると、気晴らしなどに時間を使うようになる。この場合、必然的に、しんどくて面倒なことは、先送りされる。

この実験の結果を解釈すると、それ以前の研究で指摘されていた「主観的に幸せな人は、仕事のパフォーマンスが高い」「幸せな人が多い会社は、1株あたりの利益が高い」ということの理由が見えてくる。幸せな人は、重要だが面倒で面白くない仕事を、労をいとわず行うことができる。このような仕事は、行き詰まった局面を打開したり、変化する状況に適応したりするのに役立ち、成果は大きい。一方、幸せでない人は、精神的な原資や精神的なエネルギーが足りないため、このような面倒な仕事になかなか手をつけられないのである。

そうなると次に湧いてくる疑問は、「では人々を幸せにし、生産性の高い組織をつくるには、どうしたらいいのか」というものだ。われわれはテクノロジーにより、それを明らかにしてきた。

技術が心理研究・人間行動研究を変える

先に述べたスマートフォンによる実験のように、人の心や行動を、学術的に明らかにする手法に、最新のテクノロジーが使われ始めている。

私は多くの仲間たちとともに、過去15年以上にわたり、テクノロジーを活用して人間行動に関する大量のデータを収集し解析する研究を行ってきた。結果としてみると、これは世界の先駆けとなるものになった。

その技術のひとつが、胸に装着する名札型のウエアラブル端末であった。この端末の画期的なところは、端末を装着している人どうしで、いつ誰と誰が面会したかのデータを収集できるようにした点だ。これにより、人と人とのつながりを表すネットワーク構造、すなわち「ソーシャルグラフ」(下図参照)が可視化できるようになった。

約1500人分のソーシャルグラフ。○□△がそれぞれ人を表し、計測期間中に会話した人どうしが線で結ばれている(出所)『予測不能の時代: データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ』(草思社)

(外部配信先では写真や図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

拙著『予測不能の時代: データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ』において詳細を解説しているが、ウエアラブル端末から得られた大量データと、質問紙による主観的幸福度の指標を解析すると、意外なことが次々に明らかになった。

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