ジャガーを手放してわかった昨今の中古車事情 1年7000kmも走ったのに30万円高の値がついた

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4社が集まった査定風景。1時間以上もかけて入念に観察してもらった(筆者撮影)

こうして2020年10月某日、4人の中古車査定士が筆者のガレージ近くに集まった。1人は約束の時間に現れなかった。彼らはかれこれ30分ほどクルマを観察し続けた。昔、別のクルマを査定に出したときから比べるとずいぶん時間がかかる。その後4人それぞれが現場から本部と繰り返し連絡をとる。車両の状態だけでなく、装備を逐一確認してグレードの確認をするのも大変なのだそうだ。専門の業者が持っているデータベースをもとに逐一確認するらしい。

このクルマは新車で買った友人から引き継いだもので、左リアフェンダーを駐車場で派手に擦って修理したことを前のオーナーから聞いていた。正規ディーラーで100万円以上もかけて大修理をしたそうだ。

筆者でもわからなかった修理痕を発見

見た目のうえでも乗った感覚でもそのことは私には判別できていなかったが、いちばん熱心に、昼間にもかかわらず懐中電灯をかざして細かいところまで観察していた査定士が、その痕跡を見事に発見した。リアフェンダーの後端にゴム部品を剥がした形跡があり、その上を見るとごくわずかにパネルが波打っている。さらにドア裏のゴム部品を剥がすと、フェンダーとボディを突き合わせるところに修正痕がみつかったというのだ。「これは修復歴ありと判断するかどうか微妙です」。

フェンダーの修理痕を査定士が発見。リアシート脇のラバーをめくると、左側(写真右)のみ溶接をやり直した痕跡が明白(筆者撮影)

数人の査定士を同じタイミングで呼ぶと、価格競争が生じるのはいいが、車に弱点がある場合はその情報が全員に共有されてしまう。そういうデメリットがある。

1時間あまりが経過し、そろそろ検分も終わったようなので、「査定価格はいかほど?」と聞いてみると、「公平にやるなら条件を教えてほしい。現金払いがマストなのか、この場で最も高い数字を出した業者に決めてくれるのか。最低の売却価格はいくらを考えているのか。最も高い業者と契約すると約束するなら、本社の査定責任者に高い価格を交渉するが、そうでなければ価格を抑えることになる」。

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