トヨタ「カローラ」、セダン不況でなぜ売れる? HVにワゴン、新旧併売とトヨタの心意気が鍵

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海外の影響を受けて日本車も大型化が進んだことが、カローラにも及んだ。世界共通のプラットフォームで商品化されてきたカローラが、2006年以降ついに国内と別のプラットフォームで海外展開されることになったのである。逆にいえばトヨタは、国内の顧客のために別のカローラを仕立ててきたのである。当然、二重の手間だ。

ホンダ「シビック セダン」と「シビック ハッチバック」(写真:ホンダ)

それに対し、たとえば大衆車を牽引してきた日産「サニー」は姿を消し、ホンダ「シビック」は3ナンバー車となったうえで一時は日本での販売がなくなってもいる。しかし、トヨタにとって中核となるカローラは、5ナンバー車をつくり続け、再び世界共通のプラットフォームで開発され、3ナンバー化した現行車ではあるが、同時に前型の5ナンバーカローラを併売しているというわけだ。

日産には「ノート」があり、ホンダには「フィット」があるとはいえ、愛用してきた車種がサニーのようになくなったり、シビックのように大きくなりすぎたりして離れていった顧客もあったのではないか。既納客を大切にするトヨタの姿勢が、カローラの歴史のなかで際立つ。

21世紀にふさわしい価値をカローラが提供できるか

セダン、ワゴン、ハッチバックをラインナップする12代目カローラ(写真:トヨタ)

1999年代以降、グローバル化の言葉がもてはやされたが、すべての商品に通じる話ではないはずだ。機能を拡張し大型化していくスマートフォンも、やがてその限界が見えはじめるだろう。用途に応じた細分化が行われることになるはずだ。そして細分化が進めば、何のためのスマートフォンであったかが忘れられかねない。

クルマも地域によって道路の幅はもちろん、人口の密度の違いによって所有から共同利用のほうが好都合である状況もあるはずだ。大きいことが立派で上質であるとの価値観は20世紀までの感覚ではないだろうか。

電気自動車(EV)になれば、軽自動車でさえ小さな高級車という価値を持つことができる。CASE(コネクテッド/オートノマス/シェアード/エレクトリック)という言葉の真意は、21世紀にふさわしい新たな価値を見出すことであり、カローラが今後どのような価値を提供するかを興味深く見守る必要がありそうだ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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