ルネサス、「凄惨工場火災」でも増益宣言の必然

「1カ月生産停止」を吹き飛ばす半導体特需

ルネサスによると、1カ月の生産停止と、その後の段階的な生産再開により、230億円分の売り上げ機会を損失した。代替生産などで補い、純粋な売り上げ影響額は170億円程度にとどまる一方、火災の被害を受けた在庫の処分や、工場の原状回復・補修費用などに伴い、年間の営業利益を240億円程度押し下げる。

こうした圧迫要因があっても、4~6月期の営業利益は250億円前後と、前年同期の172億円から大幅な増益になる見通しだ。

背景には、半導体の需給が世界的に逼迫していることがある。昨年は新型コロナ感染拡大により一時的に需要が落ち込んだものの、その後は急速に回復。特にテレワークが広く普及したことで、半導体を多く必要とするパソコンやディスプレー向けの需要が高まっている。

加えて、職場や自宅から同じ情報にアクセスできるようにデータベースのクラウド化も進み、データセンターの能力増強といった需要も根強い。

「作ったそばから消費される」

ルネサスの売り上げの約半分を占める自動車の生産に必要な半導体も、急激に回復した需要に対し、供給が追いついていない。コロナによる経済の停滞が長引くと踏んだ自動車メーカーは、余分な在庫を抱えないようにするため、半導体メーカーに発注のキャンセルや繰り延べを行った。しかしその後、自動車販売は急回復し、一転して大量の半導体が必要になった。

そのため、自動車向けの半導体はルネサスの火災事故以前から深刻な不足に陥っていた。ドイツのフォルクスワーゲンは傘下の複数ブランドで1~3月の生産を減らしたほか、日産自動車やホンダなども年明けから生産調整を余儀なくされている。

そこに今回の火災が直撃、半導体不足に拍車をかける形となった。「在庫はボトム(底)の水準。今後は作ったそばから消費されていく」(柴田社長)状況で、2022年前半まではフル稼働に近い繁忙が継続すると見込む。

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