ウイグルで露呈、アパレル「中国依存」の苦悩 一方でカゴメは新疆産の原材料取引を停止
国際綿花諮問委員会(ICAC)によると、中国はインドに次ぐ世界2位の綿花の生産国だ。中国国家統計局の調査では、2020年の新疆ウイグル自治区における生産量は約516万トン。中国産の綿花の9割弱が同地で生産されている。
新疆で生産される綿は世界的にも、「繊維が長くてしなやかな品質」(アパレル業界関係者)で知られる。中国国内でのシェアの高さから、中国で素材調達を行う多くのアパレル企業は、製造工程で新疆の綿を使用している可能性を排除できないのが実情だ。
海外最大の市場を失うリスクも
生産面での影響以上に懸念されるのが、中国ビジネスへの打撃だ。ファストリ、良品計画といえば中国進出に成功した日系小売り企業の代表格。経営トップがウイグル問題への言及を一切避けたのは、発言の一部がネット上などで広まり、不買運動へとつながるリスクを最小限にとどめたいという意図も大きい。
ファストリの前2020年8月期決算では、中国事業(台湾・香港を含む)がユニクロの売り上げの3割弱を占めている。良品計画も今2021年8月期中間決算の中国大陸の売上高は、全社の2割弱に相当する。両社にとって海外最大の収益柱であることは言うまでもない。
両社とも中国本土への進出から15年以上が経ち、出店や商品戦略で試行錯誤を重ねて事業を軌道に乗せてきた。低収益が続く欧米事業と比べ、成長の牽引役である中国市場の重要性はひときわ高い。ファストリの柳井会長兼社長は昨年12月の東洋経済のインタビューで「10年以内くらいに中国で3000店舗体制にしたい」と展望を語っていた。
中国で不買運動が起きたH&Mの場合、前2020年11月期の中国大陸の売上高は全社の5%程度。
そのH&Mでも、3月末にホームページ上で「中国は非常に重要な市場であり、顧客やビジネスパートナーの信頼回復に努めたい」と声明文を出し、釈明に追われている。