ウイグルで露呈、アパレル「中国依存」の苦悩 一方でカゴメは新疆産の原材料取引を停止
他方で、日系企業でも新疆産の原材料の取引を停止する動きもある。食品メーカー大手のカゴメは、これまで商品の原料に新疆ウイグル自治区産のトマトペーストも使用していた。しかし2020年産の使用を最後に新たな調達は行わず、2021年で同地産のトマトペーストの使用を停止することを決めた。
FAO(国際連合食糧農業機関)によれば、中国のトマト生産量は世界トップ。新疆ウイグル自治区は夏の日差しが強く、昼夜の温度差もあることから、トマトの栽培が盛んだ。
調達停止の理由についてカゴメ広報は「品質やコスト、調達量の安定性など、さまざまな観点から調達先の見直しを行った結果」だと説明する。各種報道では、現地での人権問題が今回のカゴメの判断のきっかけとなったと捉えられがちだが、人権問題はあくまで検討項目の1つで、調達停止の主たる理由ではないという。
欧米などから広く原料を輸入するカゴメは、中国との取引をここ数年減らしており、2020年は全体の原料の調達量の約1%にすぎなかった。
販売面でも、カゴメの売り上げの2割強を占める国際事業はアメリカが中心で、中国では野菜飲料「野菜生活」を一部の地域で取り扱う程度。今回の判断が仮に中国ビジネスに影響しても、ユニクロや無印と比べれば痛手は相対的に小さいと言える。
「存在感が増すほど目をつけられる」
多くの日系企業が対応に戸惑う背景には、欧米を中心としたメディアや人権団体などが指摘する新疆ウイグル自治区での人権侵害について、正確な実態が把握しきれないという事情もある。
大手アパレル企業の幹部は「現地でどの程度まで強制労働が行われているかを見極めることは非常に難しい。実際に綿花栽培で生計を立てているウイグル人がいれば、一気に各社が取引を停止すると彼らの生活を圧迫する可能性も否定できない」と吐露する。