世界経済の「成長痛」で選別される新興国通貨 これから勝つ通貨、負ける通貨を見分ける基準

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やはり問題は経常赤字が相応に大きく、ARA基準で見た外貨準備が1.0を割り込む新興国通貨であり、アルゼンチンペソ、トルコリラ、南アランド、チリペソといった通貨群がもっとも目立つ。なお、台湾ドル(TWD)はARA未公表だが、世界で5指に入る外貨準備水準に加え、GDP比2桁の経常黒字も加味すれば大きな心配は不要だろう。

むしろ台湾ドルに関しては政治リスクに起因する売りを警戒したい。もちろん、為替が変動する要因は複数もあり、事前に把握できるものではない。足元で新規感染者数が急増しているインドのような国では今後、実体経済の悪化が金融政策の修正につながり、金利低下などを契機として激しい通貨売りを招く可能性もある。

また、バイデン政権に移行してからも関係悪化が伝えられるロシアのルーブル(RUB)のように、盤石の経常黒字と外貨準備を誇りながらも精彩を欠く通貨もある。テーマは時々刻々と変わる。

「予想される混乱」は収益機会でもある

だが、過去の経験則に倣うのであれば、先進国、端的にはアメリカの経済・金融情勢の好転を受けて新興国からの資本流出が加速、新興国中銀が通貨防衛のための望まぬ利上げを強いられるという場面は、「予想される混乱」と言ってもよい。

IMFを筆頭とする各種機関の見通しが正しいとすれば、こうしたパターンは遅かれ早かれ1年以内に目にすることになると筆者は考えている。取引・収益の機会としては捉えたいところである。既に先進国ではカナダが量的緩和の縮小に踏み切っているが、これを追いかけるように、早ければ年後半以降にそうした動きが活発化するおそれはある。そのときに備えて、どの国・通貨が危うそうなのかは頭に入れておきたい。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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