世界経済の「成長痛」で選別される新興国通貨 これから勝つ通貨、負ける通貨を見分ける基準

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経常収支と並んで資本流出の防波堤として期待されるのが外貨準備だ。古くは「輸入3カ月分以上」や「対外短期債務との比率(外貨準備÷対外短期債務が1.0以上)」、「マネーサプライとの比率(外貨準備÷M2が10~20%程度)」が資本流出局面に備える際の適正な外貨準備水準と言われていた。

現在ではIMFが外貨準備適正評価(ARA:Assessing Reserve Adequacy)と題し、そうした伝統的な基準を組み込んだうえで、外貨準備に関する総合的な判断基準を設けている。具体的には、①輸出額、②対外短期債務、③マネーサプライ(広義流動性、Broad money)、④その他債務を構成項目とする判断基準である(①~④にかかるウエイトは固定相場制と変動相場制で異なる)。

外貨準備で見ても弱い通貨の顔ぶれは同じ

IMFはこうして算出されたARAに対し100~150%程度(外貨準備÷ARAが1.0~1.5程度)の外貨準備水準を維持することを推奨している。上で言及したアルゼンチンペソ、トルコリラ、南アランド、チリペソは1.0を割り込んでおり、外貨準備基準に照らしても不安がある。

中国人民元が1.0を割り込んでいるのは巨額のマネーサプライ(M2)の存在を抱えているためである。国内のマネーが多ければそれだけ資本逃避に備えるための外貨準備が必要になるという考え方だ。しかし、同国固有の通貨危機ならばまだしも3兆ドルを超える外貨準備と世界最大の経常黒字(2020年実績)を踏まえれば、世界の正常化に伴う「成長痛」は十分乗り切れるだろう。

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