世界経済の「成長痛」で選別される新興国通貨 これから勝つ通貨、負ける通貨を見分ける基準

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そのうえで目に付く通貨を挙げるとすると、アルゼンチンペソ(ARS)やトルコリラ(TRY)は劣勢である。いずれも経常赤字の大きさから通貨売りにさらされる定番だ。アルゼンチンペソは慢性的な外貨不足が指摘される中で売られやすく、経常赤字に起因する通貨安である。

経常収支以外にも問題の多いトルコリラ

一方、トルコリラは内政運営のまずさも相まって売られることが多く、今次局面では観光産業への打撃が実体経済の悪化を招いていることも通貨安の理由として挙げられている。トルコリラについて言えば、経常赤字は数ある通貨安の理由の1つにすぎない印象である。

なお、この2通貨は2019年通年で見ても20~40%もの下落を経験しており、もはや売りが常態化している。来るべき「成長痛」で真っ先に混乱を経験しやすい通貨だろう。

経常赤字通貨でも南アランド(ZAR)は対ドルで3%ほど上昇しているが2019年通年では5%下落しているという経緯がある。経常赤字も相応に大きく、アメリカの金利が上昇するような局面では金価格上昇という追い風も期待しづらいだろう。アメリカの金利とドルが相互連関的に上昇する局面では「成長痛」を被りやすい通貨と考えたい。

メキシコペソ(MXN)も0.4%の経常赤字国通貨ながら堅調だが、2019年通年では5.5%下落しており、従前の原油価格上昇を踏まえれば、むしろ産油国通貨の割に軟調な印象を受ける。チリペソ(CLP)は銅価格上昇の恩恵を受けて買われているようだ。アメリカ金利が上昇するような局面では景気回復期待から銅価格も堅調になりそうゆえ、このあたりはチリペソの下支えにはなりそうだ。ただ、そもそも「成長痛」がテーマ視される局面ではGDP比3%前後の経常赤字というのはやはり目を付けられやすいように思われる。

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