「安定した仕事」捨てるエリート層が続出のワケ 広がる「YOLO(人生は一度きり)」のマントラ

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高い地位や報酬を捨て、自分の道を生きようとする人が増えている(イラスト:ndrea Chronopoulos/The New York Times)

疲れ果てたアメリカの意識高い系ミレニアル世代に、何か妙なことが起こっている。コロナ禍の在宅勤務が始まって1年。自宅でのパン作りとペロトンのサービスを使ったエクササイズの合間に、MacBookの前にかがんで次々と行われるズーム会議にひたすら耐えてきた彼らは、慎重に駒を配置してきた人生のチェス盤をひっくり返し、のるかそるかの大勝負に踏み切るようになっている。

楽で安定した仕事を捨てて起業する者もいれば、副業を本業に変えてフリーランスになったり、そうした独立計画にいよいよ取りかかったりする者もいる。出勤を再開せよ、という上司の命令をあざ笑い、好きな場所で好きな時間に働けない会社なんか辞めてやる、と脅す者もいる。

上昇するワクチン接種率と雇用市場の回復に、彼らは勢いづいている。1年間のステイホームと資産価格の高騰で膨らんだ手元資金も、リスキーな決断を後押しする要因になっている。もちろん単に転職するだけの場合もあるが、同じ場所を延々と走り続けさせられる会社人生のレールから完全に降りるケースも増えている。

つまんねー会社仕事なんかやめて冒険しようぜ

この動きにスローガンがあるとしたら、それは「YOLO」だ。「人生は一度きり(You Only Live Once)」を意味するこの略語は10年ほど前にラッパーのドレイクが広めたもので、以来、好んでリスクを取る人々のモットーになってきた。レディットの掲示板を根城に無責任な株取引を繰り広げている個人投資家たちもYOLOを合言葉にしている。

彼らのギャンブルは必ずしも儲けることだけが狙いではないが、結果的に儲かってしまうこともある(少し前に株式市場を震撼させたゲームストップ株騒動はYOLOの典型だ)。最近では、会社仕事に飽き飽きした、ある種のサラリーマンに広がる意識を象徴する言葉にもなっている。

誤解してもらいたくないのだが、パンデミックはまだ終わっていないし、失業や身近な人々の死に苦しんでいるアメリカ国民は今もごまんといる。大胆な行動に踏み出せる余裕のある人が限られていることは言うまでもない。それでも、いざというときの蓄えがあり、需要の高いスキルを持っている人々の間では、職業面で怖いもの知らず大胆行動に踏み出す風潮が強まっている。

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