「安定した仕事」捨てるエリート層が続出のワケ 広がる「YOLO(人生は一度きり)」のマントラ

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その背景には、金銭的にリスクの高い行動に出られる余裕を手にした人々がかつてないほど増えたという事情もある。コロナ給付金、上乗せされた失業給付、上昇する株価によって懐が潤い、経済的に以前より分厚いセーフティーネットを手にした労働者は少なくない。

深刻な人手不足に直面している業界は多く、業種によっては新しい仕事はすぐに見つかる(これは何もハイテク業界に限った話ではない。物流業界などでも多くの会社が欠員を埋めるのに四苦八苦している)。

アメリカの求人は2月に2年ぶりの高水準を記録。エコノミストや経営者らは、これから離職率が高まると予想する。パンデミックで身動きが取れずに転職を思いとどまっていた人々が、いよいよ行動を起こすことになるからだ。

「伝統的なキャリア」に対する信頼が崩れた

もちろん、YOLO的な選択に踏み切る事情は各人によって違う。とはいえ、その多くはおそらく、ミレニアル世代に広がる深い失望、あるいは「変わり者が報われ、慎重派が損をする方向へと経済が変化していっている」という感覚と結びついている。

主に有名大学を卒業し、地位の高い業界で働き、決して「エッセンシャルワーカー」に分類されることのない20代後半〜30代前半の会社員に何人か話を聞いてみると、こんな反応が返ってきた。ホワイトカラーとして出世の階段を登る伝統的なキャリアのあり方に対する信頼がパンデミックで崩れ落ちた、というのだ。

世の中を見渡せば、独立心旺盛な同世代がスタートアップ企業に参加したり、仮想通貨に投資したりして大金持ちになっている。それなのに自分はといえば、上司が押しつけてくるつまらない仕事でアップアップになっている。コロナ禍という人生で最も困難な時期にもかかわらず、上司は私たちをろくにサポートしてくれなかった。おまけに会社は、私たちの仕事を機械に置き換えることまでもくろんでいる——。

「この1年で、企業が従業員をどの程度大切にしているか、本当のところがバレてしまった」とノースカロライナ州シャーロットでキャリアコーチをしているラティーシャ・バードさんは言う。「私たちの暮らしが一変したことを考慮せず、これまでどおりに事業を進めようとする会社で働き続けるのは難しくなっている」というわけだ。

(執筆:テクノロジーコラムニスト Kevin Roose)
(C)2021 The New York Times News Services

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