「安定した仕事」捨てるエリート層が続出のワケ 広がる「YOLO(人生は一度きり)」のマントラ

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私がこうした動きに気づいたのは今年に入ってからだ。地位も報酬も高い仕事を辞めて、不安定でも情熱を傾けられるプロジェクトに取り組むと明かす知り合いが何人も現れた。

続いてリンクトインでも、それまでとは打って変わってプロフィールの更新が相次ぐようになった。私がそのことについてツイートすると、今度は似たような報告が何十件と私の受信トレイに舞い込んできた。内容はもちろん、それぞれに違っていたが、そこには共通するテーマが存在していた。コロナ禍で人生の優先順位が変わった、というものだ。

調停中に悟りを開いた弁護士

フロリダ州オーランドで弁護士をしているブレット・ウィリアムズさん(33)にYOLOの悟りが訪れたのは2月、ズームを使った調停の最中だったという。

「1日に10時間も自宅のキッチンカウンターに座って惨めな気分になっていることに気がついた」とウィリアムズさん。「ただ単純に、こう思ったんだ。人間、いつ死んだって不思議じゃない。失うものなんてあるのか、ってね」。

というわけで、彼はパートナーの地位と大手事務所の高給を捨てて、隣人が経営する小さな法律事務所に転職した。妻や愛犬との時間を優先したわけだ。「今でも弁護士ですよ。だけど、仕事に対してこれほど前向きな気持ちになれるのは、ずいぶんと久しぶりなんじゃないかな」。

2021年の世の中を支配している感情が「閉塞感」だとしたら、今年の労働市場を形づくっているトレンドはYOLOなのかもしれない。

マイクロソフトが最近行った調査によると、世界では働いている人の4割以上が今年中に仕事を辞めることを考えているという。テクノロジー企業で働く会社員に人気の匿名ソーシャルネットワーク「ブラインド」でも、利用者の49%が今年中の転職を計画していることが先日明らかになった。

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