トヨタが「答えを教えない」からこそ人が育つ訳

当たり前の前提さえ疑いすべてを自分で考える

もうひとつ言っておくと、仕入先様から忖度のない指摘をしてもらうといった対人関係の構築力も、トヨタ社員には必須でした。打ち合わせ場所ひとつとっても、こちら側から先方に出向くだとか、仕入先での製造工程を彼らよりも詳しく理解しておくといった、「現地現物」でのコミュニケーションをしておかなければ、仕入先様に忖度の対象とされてしまうでしょう。

話を戻しますが、もしもトヨタがぶつかり合わない会社になってしまえば、トヨタはトヨタでなくなってしまいます。かつての同僚たちから伝え聞く内情から、うっすらとそうした事態を危惧してもいますので、トヨタにはぜひ、仕事への本気すぎる取り組みをこれからも続けてほしい、若い世代にも伝えていってほしいと願っています。

「会議は30分」の指示の本質は?

そしてまた、「なぜ?」や「定義は?」といった自問自答を何度でも繰り返すことも、トヨタが強みを維持できる秘訣でしょう。

『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』(すばる舎)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

トヨタでは、「会議は30分で」と上司に言われたとして、何も考えずに、ただ言われたとおりに30分の会議をしているだけでは、大抵叱られてしまいます。そのときリーダーは、なぜ「会議は30分で」と言ったのか? 状況も自分で読み取って、ケースバイケースで自分の頭で考え、時間設定なり準備なりをしないといけない会社です。

また、この記事で紹介した「社長が死ねと言ったら、お前は死ぬのか?」という言葉にあるように、とにかく自分の頭で日々洞察を深め、そのうえで動くこと、つまりはこれがトヨタで標準化されている暗黙知なのです。

一人ひとりの社員が当たり前の前提すら疑い、すべてを自分の脳ミソで考え、何度も失敗して、そこから成功法則を見つけ出していく。そうして「カイゼン」をつなげていく。そのためには表面的なものだけに縛られず、(それこそ私の本の内容も含めて)疑うこと……この疑いの目を持つことも、私がトヨタで、それこそ自分の頭で考えて学んだ「暗黙知」の核心部分だったように思います。

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