トヨタが「答えを教えない」からこそ人が育つ訳 当たり前の前提さえ疑いすべてを自分で考える

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ついでに書いておくと、その翌年(入社3年目頃)にはKさんにこんなことを言われたこともあります。「なんで人に言われたことに、何も考えずに従ってるんだ?」「社長が死ねと言ったら、お前は死ぬのか?」

どこのバトル漫画かと思いますが、こうした喧嘩腰にも聞こえる会話は決して異例ではなく、トヨタのエンジニアはいつもこんな感じでした。上司のKさんとも、彼の定年まで良好な関係を維持していましたから、別にコンフリクトがあったとか、いびられていたとか、そういう訳ではありません。いたってこれが日常でした。

決して忖度せず、お互いに直球で考えをぶつけ合う。それも常に問いかけの形で相手に自分なりの答えを考えさせる。いま思えば、これもトヨタの思考訓練法、あるいはDNAのひとつだったのだと納得させられます。

本気で叱ってくれる現場の「オヤジさん」らの存在

トヨタでの率直な社内コミュニケーションの例は、ほかにも枚挙に暇がありません。もっとも典型的なのは、生産現場の技術者「オヤジさん」たちが、開発に携わる若手のエンジニアと交わす日々の会話です。

トヨタの工場建屋内には、「よい品 よい考」という創業時からのメッセージがいまでもデカデカと掲示してありますが、オヤジさんたちはこの言葉を錦の御旗にして、少しでも「よい品 よい考」でないと思われることには、忖度どころかまったく遠慮なく、愛のあるムチを打ってきてくれます。つまり、容赦なくダメ出しの叱責を繰り出します。

そして、オヤジさんたちが若手を叱るときには、いつでも自分の都合ではなく、お客様の代弁をしてくれています。また同時に、そうしないと、若手が誤った方向に育ってしまうと思っています。本気で怒って叱らないと、相手も本気で受け止めませんし、何よりも問題が曖昧なまま放置されかねないことにもなります。(そこには、いま流行りの「忖度」という文字は一文字もありませんでした)

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