日経新聞がタイの「強権首相」をあえて招く事情 問われる報道機関としての見識と説明責任

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「アジアの未来」はこれまでもアジアの権威主義的なリーダーを招き、演説をさせてきた。報道機関が各国首脳に話を聞くのはもちろん重要な仕事である。しかし、この会議では記者が首脳らに厳しい質問をする機会などほとんどない。

2019年の同会議は、カンボジアのフン・セン首相とフィリピンのドゥテルテ大統領、バングラデシュのハシナ首相が登壇した。いずれも野党や政府批判のメディアを徹底弾圧する「アジア強権三羽烏」だ。

選挙で選ばれたのだから正統な指導者だと判断したとも考えられるが、招待前の3カ国の選挙について日経新聞は以下のように報じている。

批判的報道の後に招聘する矛盾

カンボジア総選挙を受けた2018年7月31日付の社説は「逆流したカンボジア民主化」と題し、「フン・セン首相ひきいる与党が圧勝した。だが選挙に先立ち、政権が有力な野党を強制的に解散させるなど、今回の選挙の正当性そのものに大きな疑問がある。形ばかりの民主主義はとうてい容認できない」と論じた。

4月13日の日本経済新聞1面ではプラユット首相の写真はなかった(編集部撮影)

2019年5月に開催された同会議直前にフィリピンで行われた中間選挙について、日経新聞の現地特派員は「影響力の大きい上院でドゥテルテ大統領を支持する候補者が当選し、反対派は軒並み落選した。ドゥテルテ氏が任期後半の3年間も指導力を維持し、強権体制を続ける見通しとなった」(2019年5月14日付)と報告した。

2018年末のバングラデシュの総選挙では、やはり日経新聞の現地特派員が「争点は主に、2009年から続くハシナ体制の継続か政権交代かだった。ハシナ政権は報道統制やインターネットの制限、野党支持者の弾圧など政権維持に向けてあらゆる策を講じた」(2018年12月31日付)と論評していた。

日経新聞は「容認できない」などと批判的に報じた直後に3人を招いている。報道機関として認識や主張と同会議への招聘との関係について、会議を報じる紙面でも説明はなされていない。

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