(中国編・第七話)日本は今でも軍国主義か

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私たちが、日中両国民の世論調査の作業に取り組んだのは、中国の反日デモが鎮静化した直後の二〇〇五年六月のことである。
あの時期に中国国内で一般の国民を対象とした世論調査が実現できたのは、今でもある意味で「奇跡」だったとしか言いようがない。
当時の中国国内の状況を考えれば、結果は最悪なものになるのは目に見えている。
少なくても中国側関係者の一部にはその公表が、政府批判につながったり、鎮静化し始めた国民間の感情を刺激しないか、と神経質になっている人も存在していた。

今だから言えることだが、中国で世論調査が本当に可能なのか、また調査自体、作業や公表が予定通り行えるのか、当時の私に不安がなかったかと言えば嘘になる。だが、その後の三ヶ月間の作業は突貫工事とは言え、意外なほど順調に進んだ。
世論調査の設問の作成で中国側と議論になることは何度かあったが、その内容や分析で私たちの意見が全く反古にされ、作業が中断されるようなことはなかった。世論調査の技術も、日本側と比べて中国側が劣っているわけではないことは一緒に作業を行ってすぐ分かった。最後に残った問題は、その調査結果の公表の仕方だった。

世論調査に関して私たちと中国側はいくつかの合意をしている。世論調査の設問は言論NPOと北京大学国際関係学院が共同で作成し、分析は日中それぞれが行い、公表する、という内容だ。
そのため、北京大学は中国側の分析結果のレポートを用意したが、私たちはそれに加え、日中の世論結果を比較できる詳細なデータも併せて公表すべきと考えていた。そうしないと両国のメディアにこの結果を正確に報道してもらえないと考えたからだ。
その意向は内々に中国側にも伝えていたが、明確な返事はなかった。それなら、まず独自にそれを作成しよう、と私は考えた。問題はそれがフォーラム立ち上げまでに間に合うのかである。
私たちがまとめた分析結果は4つの両国のデータに基づくものである。

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