今回もホンダ系を中心に、自動車関連企業が上位にランクインした。一般的に、業務計画を立てやすい製造業のほうが、非製造業よりも計画的に有給休暇を取得しやすいとされる。本調査の業種別取得率を見ても、輸送用機器関連企業の77.3%に対して、倉庫・運輸関連業、建設業、小売業などは50%以下だ。業種ごとに差があることがわかる。
しかし、非製造業でも有給休暇を取得しやすい環境づくりに取り組んでいる企業はある。
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、41位(87.7%)でサービス業トップだ。同社では、嘱託社員や準社員などの有給休暇取得率が毎年90%以上となっており、社員よりも高い。
百貨店首位の三越伊勢丹ホールディングスも81位(82.5%)と健闘した。同社では連休用の休日を設定し、通常の有給休暇と合わせて1週間の連続休暇が年4回取得可能だ。2020年4月からは半日有給休暇制度を導入し、今後は平均消化率90%を目指すとしている。
また、一般的に激務のイメージが強い商社でも、住友商事は54位(85.1%)と上位をキープしている。同社は2016年から有給休暇取得日数の定量目標を設定している(2019年は16日)。なお、2020年からは「自律的な働き方の実践」として、定量目標を設定せず、各組織や個人の自己管理としている。
取得率は56.3%と過去最高
厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」によると、有給休暇取得義務化の効果もあってか、2019年の平均有給休暇取得日数は10.1日、取得率は56.3%と過去最高となった。「2020年に70%」という政府目標とは大きな乖離があるが、取得率は右肩上がりだ。
しかし、2020年以降は新型コロナウイルスの影響もあり、継続して取得状況が改善するかは不透明だ。大手旅行サイト「エクスペディア」が実施した「有給休暇の国際比較調査」では、2020年は日本を含む15カ国で有給休暇の取得日数が減少したとしている。ただ、コロナ禍における有給休暇の取得しやすさについて、日本は「変化なし」が76%となっており、コロナ禍の影響よりも従来の休みにくい企業風土が根本的な原因とも考えられる。
新型コロナウイルスの影響によるテレワーク制度や時短勤務などの広がりによって、職住近接は加速した。仕事とプライベートの境界が曖昧になり、外部とのコミュニケーションも少なくなれば「燃え尽き症候群」に陥る危険もある。企業には、単純な取得推進だけではなく、どのように従業員に休んでもらうか、つまり有給休暇の質のマネジメントへの対応も求められている。
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