科学的に「ナックルボール」はなぜ打ちにくいか 「変化球」の科学的分析で見えてくること
●カットボール
カットボールは、基本的にスライダーと同じ握りですが、ストレートとスライダーの中間くらいの握りになることもあります。カットボールには、スライダーよりも球が速く、曲がりが小さいことが求められます。
カットボールの効果を一番高くするには、途中まではストレートと同じ軌道であることが大切です。そのためには、球速効率も回転軸も直球に近くなりますが、わずかに軸に角度がつくだけで打者には曲がったように感じられますので、「曲がればいい」というボールではないことを投手は気をつけるべきです。
回転速度は毎分2400~2500回転、球速効率は95%程度と、ストレートに近いものが有効で、さらにジャイロ成分も大きくなることが多いです。
●ツーシーム
ツーシームは本来、投げ方はストレートと同じですが、握りだけを変えてボールを動かすことを目的とするものです。そのため、回転軸はストレートと同じです。
縫い目の影響で「回転速度が低くなる」と言われてきましたが、近年の研究で、「ツーシームの空気抵抗は、フォーシーム(ストレート)とほとんど変わらない」という結果が、ユタ州立大学のバートン・スミス(Barton Smith)氏らの流体測定によって明らかになりました。この実験では、ツーシームとフォーシーム(ストレート)の差は、回転軸の傾きによるものが大きいことが示されました。
ツーシームの習得が難しいのは、シュート成分が多くなると、コントロールが難しくなるからです。基本的にストレートにもシュート成分があります。そのため、ツーシームを投げるときは、胸郭をよく回転させて、より前方でリリースする意識が大切です。球速効率は95%くらいです。
無回転系を徹底解説
【無回転系】
●フォーク、スプリット
フォークとスプリットは無回転系の代表格です。フォークの回転速度は毎分1,000回転以下になります。この回転数だと重力の影響を受けやすく、大きく落ちて見えます。球速効率も85~90%くらいになります。ご存じの方も多いでしょうが、人差し指と中指で挟むように握ります。
一方、スプリットは昔、SFF(スプリット・フィンガード・ファストボール)と呼ばれました。「ファストボール」とあるように球速は速く、球速効率も92~95%あります。1980年代に、メジャー・リーグでマイク・スコットという投手がこのSFFを駆使して活躍したのを機に、日本でも投げられるようになりました。スプリットの回転速度は毎分1500回転くらいです。
フォークもスプリットも、回転軸はほぼフォーシーム(ストレート)と同じです。回転速度は、フォーク→スプリット→フォーシームという順番に速くなります。
スプリットの中には、投げるときに挟んだ指の掛け方をズラすことでジャイロ成分を多くするようにして投げる方法があります。
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