都営三田線「8両化」、悲願実現への長い道のり 昔から計画あったが…ついに2022年度開始

拡大
縮小

当面の間6両となった理由は「開通時の需要状況においては、6両編成で対応可能と各社間で判断したため」(都交通局)という。当時の報道によると、都交通局が8両化を求める一方、利用者の少なさを理由に営団側が6両のまま維持を主張して綱引き――といった動きもあったようだ。いずれにせよ2000年の直通開始時には、8両化は実現しなかった。

だが、2000年度に1日平均約46万人だった三田線の乗車人員は、2018年度には約67万人まで増加。乗り入れ先の東急目黒線も利用者が増え続けており、「継続的な乗客量調査などにより混雑状況を把握するとともに、相互直通運転を行っている関係各社の動向なども踏まえ総合的に判断した」(都交通局)結果、ついに8両化の実施が決まった。

8両化のためには、車両の導入以外に施設の改修も必要だ。現在進めているのは、ホームドアの更新・増設や信号施設の改修など。ホームドアの更新は、4月中旬時点では西高島平―板橋区役所前間と西巣鴨―千石間の各駅で実施済みだ。このほか、火災対策基準に基づく駅の防災改良工事も必要という。

都交通局は8両編成の6500形を2022年度から投入する予定だが、詳細な時期は未定。一方、東急目黒線は2022年度上期から同社保有車両の8両化を進め、東急新横浜線が開業する同年度下期には、目黒線用車両全26本を8両編成にする計画を公表している。朝ラッシュ時の三田線に8両編成がお目見えするのはいつになるだろうか。

三田線車両はどこまで走るのか

さらに注目されるのは、2022年度下期に開業予定の東急新横浜線・相鉄新横浜線を介した相鉄(相模鉄道)線との直通運転の行方だ。現在は三田線西高島平―東急目黒線日吉間で相互直通運転を行っているが、東急・相鉄新横浜線の開業後は、三田線からの列車が日吉を経て新横浜、相鉄線方面へと乗り入れることになるのだろうか。

東急目黒線の新型車両「3020系」(記者撮影)
東急目黒線の新型車両3020系の運転台には、新造時から相鉄線乗り入れに向けた機器類がある=2019年7月(記者撮影)

都交通局によると、「現時点で直通運転区間の詳細は未定」。相鉄も、乗り入れ範囲については「事業者間で検討中」との答えだ。

車両についていえば、すでに三田線にも乗り入れている東急目黒線の新型車両「3020系」は、新造時から運転台の機器類に「相鉄」の文字が見られ、将来の相鉄線内乗り入れを念頭に置いていることがうかがえる。一方、都交通局によると、三田線の新型車両6500形は現時点では相鉄線直通に対応していないという。もっとも、直通運転の範囲がまだ検討段階だけに、後から対応するよう改修する可能性も考えられるだろう。

コロナ禍である程度緩和されたとはいえ、やはりラッシュ時は混雑する三田線。板橋区内沿線在住の男性は「朝の始発でも席が埋まっていて、いつも混んでいる印象。早く8両になってほしい」と話す。構想は以前からあったものの、長らく実現しなかった「8両化」。だが、悲願が現実になる日は近づきつつある。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT