スクープ!東京女子医大で医師100人超が退職  一方的な経営陣の方針に抗議の意思表示か

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存続の危機とまでいわれる中、創業者一族である岩本絹子氏は2014年に副理事長に就き、2015年度からは副理事長兼経営統括理事として辣腕を振るうようになる。東京女子医大の経営統括は事務局の責任者として、経営面での責任を負うポストだ。岩本氏は2019年度から理事長に就いたが、引き続き経営統括理事を兼ねる。

関係者によると、岩本氏はボーナスの大幅な減額や定期昇給の抑制など、徹底した人件費削減を実施したという。

人件費を削り、50億円の黒字決算

これによって、収入に占める人件費比率は2015年に46.9パーセントだったが、19年には38.9パーセントまで下がり、開設以来、最高額の黒字を記録。間もなく20年度の決算が公表されるが、コロナ禍であっても、約50億円の黒字の見込みだという。

医師をはじめとする職員たちは、経営立て直しのために人件費の削減を受け入れてきた。だが、黒字経営になっても、理事会は職員に利益を還元するのではなく、大学施設の大半を建て替える計画に着手、莫大な資金を投入している。

さらに、施設の建設などにあてる、目標額50億円の募金を広く呼びかける文書が、職員にも回ってきたという。個人の場合、一口10万円を3口からの協力を求めたことから、職員の感情を逆なでした。

「大学病院に勤務するのは、高い給料を得たいからではありません。医師として高度な医療や臨床研究に携わって、患者さんの治療に貢献したいからです。しかし、東京女子医大の理事会は、別の方向を目指しているとしか思えません」

こう話してくれた30代医師の言葉は、去っていった100人超の医師たちの心を代弁しているような気がしてならない。

新型コロナは、医師や看護師たちの使命感によって、私たちの命が支えられていることを実感させてくれた。本当に必要な医師の働き方改革とは、大学病院に勤務する医師がアルバイトをしなくても済む、妥当な賃金を保証して、医療に打ち込む環境を整えることではないだろうか。

岩澤 倫彦 ジャーナリスト

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いわさわ みちひこ / Michihiko Iwasawa

1966年、北海道・札幌生まれ。ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。2016年、関西テレビ「ザ・ドキュメント 岐路に立つ胃がん検診」を監督。2020年4月、『やってはいけない、がん治療』(世界文化社)を刊行。近著に『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。

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