次世代ワクチン「ホームラン級進化」の衝撃

「効く、安い、手に入れやすい」で世界は一変

既存のワクチンの利便性などを大幅に上回る「次世代ワクチン」の臨床試験が多くの途上国で始まろうとしている(写真:David Paul Morris/Bloomberg)

ブラジル、メキシコ、タイ、ベトナムで臨床試験(治験)が始まろうとしている新たな新型コロナウイルスワクチンは、世界的にパンデミックとの戦い方を変えることになるかもしれない。「NDV-HXP-S」と呼ばれる新ワクチンには、現行のワクチンより強力な抗体を生み出すと広く期待されている新たな分子設計が用いられている。この分子設計を使ったワクチンが治験入りするのは初めてだ。これまでのワクチンに比べ、生産がはるかに容易になる可能性もある。

ファイザーやジョンソン・エンド・ジョンソンなどの現行ワクチンは入手の難しい原料を使って特別な工場で生産しなければならない。これに対し、この新ワクチンは鶏卵を使って大量生産できる。世界中の工場で毎年何十億回分という量が生産されているインフルエンザワクチンと同じ手法が使えるのだ。

安全性と有効性が確認されれば、NDV-HXP-Sはインフルエンザワクチンのメーカーによって年間10億回分を上回る量産が可能となる。現在ワクチンの入手に苦労している低・中所得国にも、国内生産や国外から安価に調達する道が開けてくる。

衝撃的なゲームチェンジャー

「衝撃的だ。これは(状況を劇的に変える)ゲームチェンジャーになるだろう」。デューク大学国際保健イノベーションセンターのアンドレア・テイラー副所長はそう話す。

だが、それにはまず治験によってNDV-HXP-Sが実際にヒトに対しても有効であることを実証しなくてはならない。治験の第1段階は7月に完了する予定で、最終段階にはさらに何カ月という時間がかかる。ただ、動物実験ではすでに期待できる結果が得られている。

「効き目はホームラン級だ」とNDV-HXP-Sの開発で調整役を担った非営利組織PATH(パス)のブルース・イニス氏は語る。「世界クラスのワクチンだと思う」。

次ページ「最強ワクチン」の仕組み
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 近代日本を創造したリアリスト 大久保利通の正体
  • ほしいのは「つかれない家族」
  • 赤木智弘のゲーム一刀両断
  • 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」
トレンドライブラリーAD
人気の動画
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
AOKI、コロナ禍で売れた「パジャマスーツ」で描く復活戦略の要諦
AOKI、コロナ禍で売れた「パジャマスーツ」で描く復活戦略の要諦
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
持たざる国・日本に大激震<br>エネルギー危機が来る

脱炭素の移行期に化石燃料の争奪戦が勃発。天然ガスの価格は歴史的な急騰を記録しました。余波はサプライチェーンの混乱から世界経済の後退懸念、原発待望論まで広がります。資源小国の日本が生き残る道はあるのでしょうか。

東洋経済education×ICT