次世代ワクチン「ホームラン級進化」の衝撃 「効く、安い、手に入れやすい」で世界は一変

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同氏はまた、ヘキサプロベースのワクチンなら世界の広い地域で利用できるようになるとも考えている。中でも状況の改善が強く求められている地域が低・中所得国だ。第1世代のワクチンは、こうした地域にほんのわずかな量しか届いていない。

こうした目的にかなうようテキサス大学は、低・中所得国80カ国の企業と研究機関に対し、ロイヤルティーを支払うことなくヘキサプロを利用できるライセンス契約を用意した。

鳥ウイルスが大量生産の決め手に

その一方で、PATHではイニス氏らが新型コロナワクチンの生産量を上げる方法を探していた。彼らが求めていたのは、豊かではない国が自力で生産できるワクチンだった。

PATHのチームが考えていたのは、鶏卵を使って安くワクチンを作れないか、ということだ。この方法なら、インフルエンザワクチンの工場で新型コロナワクチンを生産できるかもしれない。

ニューヨークでは、マウントサイナイ・アイカーン医科大学の研究者チームが、ニューカッスル病ウイルスという人体に無害な鳥ウイルスを使って、まさにそのようなワクチンを製造する方法を見つけ出していた。

ニューカッスル病ウイルスを使って、さまざまな病気に対するワクチンを生み出す実験は何年も前から進められていた。例えばエボラ出血熱のワクチン開発でも、ニューカッスル病ウイルスの遺伝子セットにエボラの遺伝子を付け加える手法がとられている。

遺伝子操作したウイルスを鶏卵に挿入すると、そもそもが鳥ウイルスだから相性が良く、卵の中で急速に増殖した。こうして科学者はエボラタンパク質で覆われたニューカッスル病ウイルスをつくることに成功した。

マウントサイナイの研究者チームは、エボラタンパク質の代わりに新型コロナのスパイクタンパク質を使って、これと同じことを試みていた。そこに入ってきたのが、マクレラン氏が新たにヘキサプロをつくり出したという情報だ。

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