遊覧飛行に花火大会「修学旅行」がコロナで変貌 都立高校は2020年度の実施「ゼロ」だったが…

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例年約75万人の人出がある「大曲の花火」。昨年はコロナ禍で中止となった。地域経済には大きな痛手となった。その逆境を乗り越えようと、郷土の花火文化を活用した修学旅行誘致に取り組んでいるのが秋田県・大仙市だ。

模擬花火玉づくり体験(写真:大仙市提供)

2020年度は隣県の青森県の私立中学校が初めて訪れた。この中学校は例年、沖縄に行っていたのだが、コロナ禍のため沖縄を断念し近隣県の候補地を探していたところ、大仙市の取り組みを知り、大曲の花火文化を体験するツアーを実施した。

地元の花火工場の見学、模擬花火玉づくり体験、文化継承施設での花火学習を経て、夜、待ちに待った花火鑑賞という流れだ。

「修学旅行でお越しになった学校のための打ち上げ花火です。自分たちのための花火ということで生徒さんたちにとって思い出に残る体験になったのではないでしょうか」(大仙市・花火産業推進課)

オリジナルの花火鑑賞(写真:大仙市提供)

2020年度は当初3校から申し込みがあったが、コロナ感染拡大の影響で結局、実施されたのは1校どまりとなったが、2021年度も補正予算を組んで誘致活動を続けていくという。

花火工場見学や花火鑑賞の様子はユーチューブでも配信されている。

共通するのは「ふるさと・地方の価値」

3つの事例を見てきたが、共通するキーワードは「ふるさと・地方の価値」。県内や近県を訪れ、地域のモノづくり、文化、食に触れる、自然を楽しむといった体験型のツアーが人気になっている実態が浮かんできた。

コロナ禍を機に、人気観光地を訪れる旧来のスタイルからの変貌が始まった。生徒や児童にとって、ふだん気がつかない地元、地方のよさを知るうえで貴重な体験になるはずだ。ともすれば「楽しみ」「思い出作り」優先で、有名観光地やテーマパークに偏りがちだった修学旅行が、アフターコロナに向けてどう進化していくのか。

各地の自治体が知恵を絞りあい、魅力的な修学旅行モデルを構築していけば、地方活性化にも大きな可能性が出てくるはずだ。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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