NHK受信料値下げ法案、異例の「廃案」のわけ 違法接待問題の余波、狙いは野党の追及封じか

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問題の広がりを受けて、武田総務相は13日の衆院総務委員会で、「放送法改正も視野に検討する」と発言。総務省は4月末を期限に、すべての認定放送持ち株会社を対象とした調査を実施している。

14日には自民の森山裕、立憲民主の安住淳・両国対委員長が会談。安住氏が「さまざまな問題が起きて、今国会で(放送法改正案を)予定通りやるという話にはならない」と主張すると、森山氏も「(総務省調査の)報告をしっかり見て、現行の放送法がどうなのかという検討が必要だ」と応じ、調査結果を踏まえて法案内容を見直す考えを明らかにした。

放送関連で初めて指定された重要広範議案

放送法改正案に盛り込まれた割増金・積立金両制度と外資規制問題は、直接関係しているわけではない。しかし、政府・与党は今国会で同改正案の審議を行わないで廃案とし、衆院選後の秋の特別国会に外資規制の見直しも含めた新たな法案として提出することで調整する方向だ。

衆議院議院運営委員会は同法案の取り扱いについて、社会的に重要な影響を及ぼすとの判断から「重要広範議案」に指定した。放送法関連法案では初めての指定で、「違法接待問題の余波」(自民国対)とみられている。

重要広範議案に指定されると、法案審議では菅首相が衆参の本会議や総務委員会に出席して答弁する必要がある。一定の審議時間の確保も必要で、関係者の間では「指定された時点で今国会中の成立は厳しい」(自民国対)との声も出ていた。

武田総務相や森山国対委員長の法案見直し発言はこうした事情を踏まえたものだ。ただ、会期が2カ月も残っている段階で廃案の方向で調整するのは、「今国会で審議すれば、野党側が総務省違法接待問題での菅首相の長男の関与を絡めて追及し、政権のイメージダウンにつながりかねない」(自民国対)との判断からとみられている。

ただ、NHK受信料値下げは菅首相が総務相時代からこだわってきたテーマだ。2007年、当時総務相だった菅氏が放送法改正案をまとめる際、「NHK受信料支払い義務化と受信料値下げ」を盛り込むことを目指したが、自民党内の反対などで挫折した経緯がある。

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