心理学者が考えた「OKをもらえる」依頼の極意 知らない人に「家の中全部見せて」もらうには?

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しかし2人の心理学者は、もっといい方法があるはずだと考えた。彼らは正しかった。別の相手にお願いしてみたところ、前の2倍以上の人が依頼に応じたのだ。

お願い事の中身は同じだ。5人か6人の見知らぬ他人がやってきて、2時間かけて家の中をくまなく見て回る。しかし今回は、半分以上の人が協力すると答えた。

違いはいったい何なのか?

2度目の実験では、小さなお願いから始めたのだ。

2つめのグループに例の突拍子もないお願いをする3日前、2人の心理学者は同じ人たちに電話をかけて、ごく小さなお願いをした。設定は前のグループと同じで、彼らは消費者団体の職員だと名乗る。

だが今回は、いきなり家中を見て回りたいと依頼するのではなく、もっと小さなお願いをした。現在使っている日用品について、電話でいくつか質問に答えてもらいたいと頼んだのだ。たとえば台所用洗剤はどのブランドを使っているかというような、ごく単純な質問だ。

電話に出た人のほとんどは、快く質問に答えてくれた。もちろん電話で質問に答えることが大好きというわけではないが、拒絶の領域に入るほど嫌いなことでもない。

その3日後、2人の心理学者が同じ人たちに再び電話をして、もっと大きなお願いをすると、協力してくれる人が大幅に増えたのだ。

最初の「小さなお願い」の効果

2人の心理学者はこう考えた。小さなお願いをされ、それに応じた人は自分自身に対する見方が変わる。彼らも最初のうちは、電話でいくつかの質問に答える以上のことはできないと思っていただろう。それぐらいなら、ぎりぎり許容のゾーンに入れることができる。

しかし、最初の小さなお願いに応じることで、彼ら自身の立ち位置が変化したのだ。2人の心理学者は次のように書いている。

「要求に応じることに同意すると、(略)自分自身を人のお願いをきく親切な人とみなすようになる」

大きなお願いに関連する小さなお願いを最初にすることで、相手を望みの方向に動かすことができる。最初に小さなお願いをされた人は、後から突拍子もないお願いをされても、許容範囲だと感じるようになるのだ。

フィールド上の位置を移動すると、それにつれて許容のゾーンも拒絶の領域も一緒に移動する。その結果、最終的なお願いが許容のゾーンに入る可能性が高くなるのだ。

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