心理学者が考えた「OKをもらえる」依頼の極意 知らない人に「家の中全部見せて」もらうには?

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職場のデスクで仕事をしているときに、携帯に電話がかかってきたとしよう。電話の主は消費者団体の者だと名乗り、調査に協力してほしいという。団体の職員があなたの自宅を訪問し、家にある日用品をすべて調べたいというのだ。

とにかく1つ残らず調べるので、自宅のすべての部屋を見せなければならない。戸棚はすべて開け、倉庫の中まで調べる。調査員は5人か6人で、所要時間は2時間を超すことはないだろう。しかも、調査への協力は完全なボランティアだ。言い換えると、タダで家をすべて見せろ、ということになる。

この話を聞いて、あなたは協力したいと思うだろうか?

大抵の人は、あまりにも突拍子もない話なので、話を聞きながら必死に笑いをこらえているだろう。5人か6人の見知らぬ人がやってきて、家の中をくまなく見て回る?

ありえない! そもそもそんなバカげたことを頼むほうがどうかしている。しかもタダで協力しろ? するわけがないだろう。このようなお願いは間違いなく拒絶の領域に分類される。ずうずうしいにもほどがあるというものだ。

スタンフォード大学の2人の心理学者が、実際に見知らぬ人に電話をかけて似たようなお願いをしたことがある。すると、協力に同意してくれたのはごくわずかだったという。

この少数派が誰だかは知らないが、おそらくよっぽどのお人好しか、あるいはそもそも何をお願いされているのかよくわかっていなかったのだろう。当然ながら、ほとんどの人は協力を断った。

「やりたくないこと」をやらせるには?

2人の心理学者は、すべての人が日常的に直面するある問題に興味を持っていた。それは、「人にやりたくないことをやらせるにはどうするか」という問題だ。

2人の心理学者も言っているように、大抵の人は「押す」ことでこの目的を達成しようとする。「気乗りしない相手に対して、できるかぎり大きなプレッシャーを与えることで、(略)むりやりそれをやらせるのである」
相手に向かって「それをしなければならない」と言う。そしてやらなかったら罰を与える。あるいは金銭的な報酬でやる気にさせる。とにかく相手が言うとおりにするまで押して、押して、押しまくる。

次ページある「お願いの仕方」でOKが2倍に
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