日本思想という病 中島岳志 他著
歴史に学ぶことは重要だが、事件や事象という歴史よりも、歴史としての思想に学ぶことがその中心になるべきだろう。
本書で取り上げられる日本思想とは、保守・右翼・ナショナリズム(中島岳志)、中今・無・無責任(片山杜秀)、文系知識人(高田里惠子)、思想史からの昭和史(植村和秀)、経済思想(田中秀臣)であり、それぞれ直接関係はせずとも微妙に交錯している。
共通するのはレッテル貼りの思考停止からは遠く、思想の根源と思想の持つ力を、比較思想学とでもいうべき視点から柔軟に解明しようとする試みである。
多く対立する立場の思想家たちがいずれも生き生きと描き出される。誰が優れ劣っているという評価はもちろんないが、読む者はおのずと相対評価の座標軸を得ることになるはずだ。
文系知識人の受難に関する章では、インテリが歴史的に陥る罠から時代を超える寓意へと連なって興味深い。どの章も日本思想を考える良い手掛かりになる。(純)
光文社 1155円
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