感染制御しても批判「横浜クルーズ船」の理不尽 専門家チームは対策に問題なしと判断していた

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――DP号での集団感染が、もし最初に起きていなかったら、どうなっていたのでしょう。

近藤:永寿総合病院(東京都台東区、2020年3月に院内感染が起き、入院患者43人が亡くなった)のようなケースがいきなりあちこちで起きて……。

阿南:内科医、呼吸器内科医がまずみて、そして感染症の専門家が出ていって、というパターンかなあ。

――危機の対処ができるチームができるだけ早期に入らないと、ヤバいのでしょうね。

近藤:「武漢からの邦人帰国」、それに続く「DP号」のオペレーションがなかったら、DMATの出番はなかったでしょうね。

DMATのコアテーマは「医療(病院)支援」

阿南:今はクラスター(感染者集団)が出たらすぐDMAT派遣ということになっている。厚労省の通知も出ました。DP号でやったことが実績になったのだと思います。いきなり大勢のコロナ患者が出たとき、患者をどう搬送するのか、そういう搬送調整をやらせろ、と。ただ、その搬送調整というのは、われわれDMATの一部分でしかない。

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――どういうことですか。

近藤:DMATのコアとなるテーマは「医療(病院)支援」なんです。その一環として搬送調整があった。でも、ただ患者を運ぶだけではありません。大災害とか、今回のような集団感染があった現場で、もともとあった医療体制にどうやって立て直すのか。全体をみてそこを支援していく。

例えば、5万床の病床があった地域で大地震が起きて、5000人が負傷したとします。がれきの下から負傷者を救い出し、医療機関に搬送したら、それで終わりでしょうか。

そうではありません。5万床あったということは、すでに5万人近くの患者さんが入院していたということです。入院していた5万人もの命を脅かされているのです。つまり、5000人の新規の患者だけのオペレーションではないのです。全体を見渡したうえで、地域の医療支援をしていかなければならないのです。

阿南:今はコロナにみなさんの目が向いていますが、コロナは1つの病気にすぎません。患者の数だって、コロナ患者は全体のほんの一部です。

DP号のときは、緊急の災害対応をしてきましたが、DP号収束以降は通常の医療ができる仕組みに戻していく必要がありました。だから、私たちは「神奈川モデル」を日々更新しながら、災害からの「復興」を目指しているのです。

(4月21日配信予定の最終回に続く)

瀧野 隆浩 毎日新聞社会部専門編集委員

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たきの たかひろ / Takahiro Takino

1960年、長崎県佐世保市生まれ。防衛大学校卒業後、毎日新聞社に入社、社会部記者として宮崎勤事件などを担当。「サンデー毎日」編集次長、本紙夕刊編集次長、前橋支局長などを経て現職。著書に『これからの「葬儀」の話をしよう』(毎日新聞出版)、『宮崎勤精神鑑定書』『自衛隊指揮官』(ともに講談社)、『自衛隊のリアル』など多数

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