阿南:ここは大事なんですけど、われわれは現場に行って「何をすべきか」と考えてはいけない。現場では「何を求められているか」と考える。
DMATの「A」は「Assistance」ですから、現場に何が足りなくて、医療者は何に困っているのか。それを徹底的に聞きだす。ここが原則なんです。「オレがいちばん知っているから、オレの言うことを聞け」というのは絶対してはならない。2005年の創設以降、初期はいろいろ失敗もあって、近藤次長がDMATの教育を変えてきたんです。
近藤:今ではまずスキルではなく、理念を教え込んでいますから。
コロナ医療体制の考え方のベースができた
――DP号から得た教訓というものは何ですか。
阿南:4つにまとめてみました。➀高齢者やハイリスクの方への特別な配慮、➁軽症・無症状者は入院させず、ホテル・自宅療養に、➂入院先マッチングなど情報収集基盤の確立、➃重症者を診るICUの負担軽減のため人員・物資のリソースの最適化、です。これをまとめたものが「神奈川モデル」といわれている医療体制です。
とくに重要なのは➁で、私たちは災害医療にある「中等症」という考え方をコロナ対策に取り入れました。
軽くはないけど、今すぐ命にかかわる状態でもない中等症の患者を重点医療機関で集め、経過をみながら振り分けて、重症者は人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)のある高度医療機関へ、軽症・無症状者はホテルや自宅でモニタリングするという仕組みです。
この考え方が、今の日本のコロナ医療体制のベースになっています。
近藤:私も考えたことは4つで、基本的には阿南先生と同じ。私の言い方だと(A)現場と後方搬送の調整機構が必須、(B)受け入れ病床確保の必要性、(C)軽症患者を受け入れる宿泊施設の必要性、(D)PCR要員確保の必要性、ということになります。
やはり、とにかく軽症者のいる場所を確保しないと、病院に入れたら医療体制は崩壊してしまう。軽症者は「医療」はなくてもいいのだから。
阿南:感染症法って、隔離は入院のことだからね。
近藤:自衛隊中央病院みたいなところに、まずたくさん受け入れてもらったのはよかった。あれでホテル療養という考え方につながりましたから。
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