身震いするほど速い「ダウントン・ミニ」の衝撃 革新を越えた革命といえるMINIクーパーの原点

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ダウントン・エンジニアリングは、バックパッカーの僕を暖かく迎えてくれた。ミニやMGなどがチューニング作業をすすめる工場を案内してくれ、チューニングパーツの置き場も見せてくれた。詳細は覚えていないが、「ちょっと大きめの町工場」といった佇まい。そこで、いかにも職人風の人たちが黙々と作業をしていた……そんなことをなんとなく覚えている。

チューニングパーツの置き場では、複雑な形状のエキゾーストパイプがズラリと並べられていた光景が印象的だった。

試乗車は赤のボディにオフホワイトのルーフ。1275クーパーSをベースにしたダウントン・ミニが用意されていた。内装は簡素で、オリジナルモデルに近かったように記憶している。どんなタイヤを履いていたかも覚えていないが、車高は少し低めだったと思う。

当時のハイチューンのエンジンには気難しい性格のものが多かった。始動するにも「儀式的手順」を踏まなければならないものも多かった。90ps以上!?のパワーを引き出しているとされていたダウントン・1275クーパーSも、当然そうなんだろうと思っていた。でも、違った。

強烈な走りを体験、最高の思い出

すでに工場の前に置かれていたクルマを、なんの説明もなく、ただ「楽しんで!」と笑顔で引き渡されただけだったが、それで十分だった。エンジンは難なく始動した。クラッチが重かったかどうか、、その辺りも定かではないが、ネガティブな記憶はまったくない。すべてが扱いやすかったという記憶しかない。

走りは強烈。身震いするほど速かった。1速、2速でレブリミットに達するのはアッという間。3速ではほんの一瞬ひと息つけたが、加速はほとんど落ちなかった。そして4速で最高速度に……短時間で達した。1275 クーパーSの最高速度は、確か160km/hくらいだったと思うが、それよりも少し低かったように記憶している。

ファイナルを低くした「スプリント用?」の特殊なセッティングだったのかもしれない。担当者にスペック関係を聞いてみたのだが、答えはなかった。

でも、とにかく速く、さらにはフレキシビリティも高かった。ほとんどレーシングチューンに近いようなパワーと速さを示しながら、街中の走りもリラックスしてこなせた。「ダウントン・チューンの真髄ここにあり」だ。身のこなしも最高だった。1275クーパーSに与えられた「ゴーカートフィーリングの原点はダウントン・ミニにあり」といって間違いはないだろう。

一時代を築いた1275クーパーSの原点に直接触れられたダウントン・エンジニアリングへの訪問は、最高の、そして自慢の思い出だ。

(文:岡崎宏司/自動車ジャーナリスト)

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