吉野家三度目の正念場、屋台骨の牛丼が独り負け、子会社も軒並み苦戦

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吉野家三度目の正念場、屋台骨の牛丼が独り負け、子会社も軒並み苦戦

「流れに抗(あらが)ったが、結果的に押さえ込まれてしまった」

吉野家ホールディングスの安部修仁社長は決算説明会の席上、厳しい表情でこう語った。2010年2月期の決算はさんざんだった。営業損益は9億円弱の赤字に転落。子会社が足を引っ張り最終赤字は約90億円に拡大した。これは創業以来、過去最大の規模となる。

緊急事態を受けて、4月から安部社長が事業会社「吉野家」の社長に復帰する人事も発表。ホールディングスの社長と兼務する体制を敷き、「2年内に改革の成果を出し、次の世代にバトンタッチする」(安部社長)。だが、その道筋は見えにくい。

牛丼チェーン3社の中で吉野家は独り負け状態にある。勝敗を分けたのは安部社長の言う「流れ」、つまり価格戦略だ。

激化する価格競争の波に乗り遅れた

昨年12月、まず「松屋」(松屋フーズ)が動いた。牛めしを380円から320円へ引き下げると、続いて「すき家」(ゼンショー)は牛丼を330円から280円へ値下げ。一気に値下げ戦争が勃発した。

だが、吉野家は動かなかった。結果、12月の既存店売上高は前年同月比22・2%減と、かつてない落ち込みを記録する(下グラフ)。

1月以降、「80円引き」などの対抗策を打ち出したが、期間値下げとあって効果は限定的。1~3月平均の既存店売上高は同17%減と大苦戦を強いられ、10年2月期の牛丼部門の営業利益は前期比で6割減った。

4月に入っても値下げ合戦は続いた。吉野家が1週間限定の270円キャンペーンを展開すれば、間髪入れずに松屋とすき家が250円で対抗。さらに過熱しそうだが、吉野家は慎重な姿勢を崩さない。


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