THE昭和「どぶ板選挙」がいまだ健在な深いワケ 「何年も変わらないこと」の裏に潜む合理性
マーケティングとは、①価値を届ける相手を決め、②提供する価値を定義し、③それを実際につくり出し、④そして伝えていくステップである、と私は考えています。「マーケティング=広告宣伝」という誤解は世に蔓延していますが、広告宣伝はマーケティングの1つのステップ、「価値を伝える」という1工程にすぎません。
この「価値を伝える」という工程は、さらに1.覚えてもらい、2.好きになってもらい、3.最終的に選んでもらう、という3つのサブステップに分解できます。
シャンプーが切れてドラッグストアに買いに行く、というシーンを思い浮かべてください。お店についてシャンプーの棚に立つと、消費者は頭に思い浮かんだいくつかの商品を目で追います。これは無意識に行われることも多いでしょう。
このとき頭に思い浮かぶ商品群は、私たちの買い物を楽にしてくれます。外国のスーパーで日用品を買おうとして、棚の前で立ち尽くしてしまったことはないでしょうか。この工程で思い浮かぶ商品が1つもなく、ただ膨大な量の「知らないもの」に囲まれると、私たちはある種の思考停止状態に陥ってしまうのです。
次に、そこで思い出した商品+αの、目についた商品をふるいにかけます。ここでものをいうのが、その商品になんとなく抱く「好意」です。
ドラッグストアの店内でエクセルを開いて、各商品のメリット・デメリットを細かく比較するような人はまずいないでしょう。このときのふるい分け・選択は「衝動的」でこそありませんが、多分に「感覚的」なものになります。商品に抱いている「好意」は、その感覚的な選択を大きく後押しするのです。
自動車などの耐久消費財では、商品の特徴が細かく比較検討される場合も当然ありますが、そもそも思い浮かべてもらえなければ、比較してもらうこともできません。実際に調べるにしても、好意を持っている商品により多くの時間をかけるでしょうし、そうした商品にはひいき目も入るのが人情です。
このように、どのような商材でも、「思い浮かべてもらえるか」「好意を持ってもらえているか」という2つの要素が、検討の土俵に上がるために決定的な役割を担っているのです。
「思い浮かべてもらう」ために、覚えてもらう
1.覚えてもらい、2.好きになってもらい、3.選んでもらう。価値を伝える、というマーケティングの工程は、この3つのサブステップに分解することができました。
そして「思い浮かべてもらえるか」「好意を持ってもらえているか」という2つの重大要素をつくり出すために必要なのが、「覚えてもらう」「好きになってもらう」という2つのアクションです。
この2つの要素・アクションは、選挙でも大きくものを言うのではないでしょうか。選挙の当日に投票先を決める人の場合、並み居る候補者の名前を前にして、そもそも知らない候補者はもちろんのこと、パッと思い出せない候補者に投票する可能性はかなり低いでしょう。
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