中国石油最大手が「天然ガス」生産を増やす事情 ペトロチャイナ、2020年の純利益は6割減少

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中国石油は事業ポートフォリオに占める天然ガスの比重を引き上げる。写真は中国・華北地方の石油掘削設備(同社ウェブサイトより)

中国の国有石油最大手の中国石油天然気(ペトロチャイナ)は3月25日、2020年の通期決算を発表した。それによれば、同年の売上高は1兆9300億元(約32兆1731億円)と前年比23.2%減少。純利益は190億200万元(約3168億円)と同58.4%の大幅な減少を記録した。

業績悪化の主因は国際原油価格の低迷だ。2020年の原油市場では新型コロナウイルスの世界的大流行の影響により、縮小した需要を供給が上回る局面が続いた。国際原油価格は2020年4月から上昇に転じたものの、年間を通じて新型コロナ発生前の水準を下回った。

事業セグメント別に見ると、「石油・天然ガスの探鉱および生産」は営業利益が230億9200万元(約3849億円)と前年比76%減少した。そんななか、中国石油はクリーン・エネルギーとして利用が拡大している天然ガスの生産を増やし、2020年の総生産量は前年比8%増の4兆2000億立方フィートに達した。

そのほかの主要事業では、「石油の精製および化学工業製品の生産」が18億3400万元(約306億円)の赤字、「石油製品の販売」が29億600万元(約484億円)の赤字をそれぞれ計上した。

2035年のCO2排出をゼロに近づける

業績が急激に悪化するなか、中国石油は設備投資を大幅に圧縮。2020年の設備投資額は2464億9300万元(約4兆1090億円)と、前年比16.9%減少した。なお、2021年の設備投資も2020年より3%少ない2390億元(約3兆9841億円)に抑える計画だ。

中国の習近平国家主席は2020年9月、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」を2060年までに実現すると宣言した。中国石油は石油・ガス生産の国策会社として、今後は事業ポートフォリオに占める天然ガスの比重を拡大する。2025年ごろまでに、石油およびガスの総生産量に占める天然ガスの比率を2020年の約43%から約55%に引き上げる。

「天然ガス事業は、当社が低炭素・低汚染の発展を具体化するための重要な突破口だ」。中国石油の総裁(社長に相当)を務める黄永章氏は、決算説明会でそう意気込みを語った。

本記事は「財新」の提供記事です

黄氏によれば、中国政府の第14次5カ年計画(2021~2025年)の期間中に天然ガスの生産量を2020年比で26%増の1500億立方メートルに引き上げ、可能ならば1600億立方メートルを目指すという。

また、中国石油の董事長(会長に相当)を務める戴厚良氏は決算説明会で、同社の二酸化炭素(CO2)の排出量を「2025年をピークに減少に転じさせ、2035年にはゼロに近づける」という目標を明らかにした。

(財新記者:羅国平)
※原文の配信は3月26日

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