石油タンカー、閑散期と繁忙期が「逆転」の背景

中東湾岸から中国へのスポット運賃が乱高下

今年4~9月は「閑散期」にもかかわらずタンカーの需要が急増した。写真は中国の石油タンカー大手、中遠海運能源運輸の超大型タンカー(同社ウェブサイトより)

原油を海上輸送するタンカーの国際市場で、伝統的な閑散期と繁忙期の逆転現象が起きている。

中国の石油タンカーの2大企業である中遠海運能源運輸と招商局能源運輸が10月末に発表した2020年7~9月期の決算報告によれば、同年1月から9月までの累積純利益は中遠海運能源運輸が前年同期の5.7倍の33億2400万元(約519億円)、招商局能源運輸が同3.7倍の39億8000万元(約621億円)に急拡大した。通常は閑散期のはずの4~9月の石油輸送が多忙を極め、年初から9カ月間の利益を押し上げたためだ。

時ならぬ大幅増益の背景は、直接的にはタンカー運賃の値上がりだ。中遠海運能源運輸の決算報告書によれば、中東湾岸地域から中国に向かう超大型タンカー(VLCC)1隻の1日当たり平均利益は、7~9月期は前年同期の約2.7倍の6万ドル(約627万円)に達した。

10~12月は「忙しくない繁忙期」に

きっかけは2020年3月、サウジアラビアの増産で原油の国際相場が暴落し、「底値買い」で大量の原油を買い付けた石油会社のタンカー需要が急増したことだ。中東から中国に向かうVLCCのスポット運賃はたちまち跳ね上がり、ピーク時には1日当たり40万ドル(約4183万円)に高騰、タンカー会社の利益は1日当たり20万ドル(約2092万円)を超えた。

だが、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」が5月から協調減産を開始し、原油相場が回復すると、タンカー運賃は下落に転じた。VLCC1隻の1日当たり平均利益は5月には5万2000ドル(約544万円)だったが、7月には2万4000ドル(約251万円)に下がり、10月は1万ドル(約105万円)前後まで落ち込んでいる。

本記事は「財新」の提供記事です

2020年10~12月期の見通しについて、海運業界のアナリストたちは「忙しくない繁忙期」になると予想している。「タンカー会社は今年の上半期に10~12月期の需要まで先取りしてしまった。そのうえ欧米諸国で新型コロナウイルスの流行が再拡大しており、石油需要は年末にかけて弱含む可能性が高い」。上海航運交易所のアナリストの徐偉氏は、財新記者の取材にそうコメントした。


(財新記者:賈天琼)
※原文の配信は11月2日

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