自動運転の「国家プロジェクト」は成功なのか SIP-adus成果発表に見る「国家で」行う意味
3つ目の課題は「サイバーセキュリティの評価基準の確立」だ。クルマがクラウドと繋がることが頻繁になると、ハッキングという新たなリスクが出てくる。クラウドとリンクしたデータの利活用はますます活発となるが、その反面ではサイバー攻撃の脅威にさらされることになるのだ。
2019年の改正道路運送車両法では通信によるソフトウェアのアップデートが可能になったが、そのサイバーセキュリティ対策として、ハッキングの足跡を探すプロジェクトがSIPーadusでは進められている。
4つ目の課題となる「地図系データの流通ポータルの構築」では、どんなことが行われているのだろうか。そもそもダイナミックマップとは、高精度3D地図データに交通情報など動的な情報を付加したもので、自動運転のキーテクノロジーの1つだ。
例えば現実の道路では、車線の数や右折レーンの有無など車線にもさまざまな属性があり、さらに渋滞情報や工事情報など、外部から提供される情報も取り込む必要がある。さらに、信号など時々刻々と変化する要素もある。こうした情報をすべて統合しようというのが、ダイナミックマップの概念だ。
国家プロジェクトとして取り組む意義
ここからは私見であるが、SIP-adusの第1期から構成委員として参加し、2020年を一里塚として研究開発を進めてきた国家プロジェクトを改めて振りかえると、ある想いが浮かぶ。
SIP-adusの年間予算は約30億円と自動車メーカーの技術投資と比べると非常に少ないが、この7年間の歩みから、多くの関係者の気持ちを1つにまとめることができていると感じる。これこそ、国家プロジェクトの意義ではないだろうか。
仮に1つのメーカーが多額な資金を投じても、多くのステークホルダーを説得することは難しい。しかし、SIP-adusの役割として、業界に横串を通し、オールジャパン体制でビジョンを共有できる意味は大きいと思った。
国家プロジェクトとは金額の大小ではなく、協調領域の切り取りと将来ビジョンの共有がいかに重要なのかと痛感した7年間であった。初代プログラムディレクターである故・渡邉浩之氏の「アリの一穴」という言葉が現実的になってきた、というのが今の素直な気持ちだ。
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