自動運転の「国家プロジェクト」は成功なのか SIP-adus成果発表に見る「国家で」行う意味
その中間発表成果を公開し、社会受容性を高めることが今回のイベントの狙いである。自動運転は、2020年度の実用化と事業化を目指すマイルストーンとして位置付けてきたので、このタイミングで開催された中間報告は重要な意味をもっているのである。
今回の成果発表については、新型コロナウイルス感染症の拡大によりオリンピック・パラリンピックが延期になるとともに、東京臨海部実証実験も一時中断になるなどさまざまな影響が出ていた。
しかし、少しでも技術開発、制度整備、社会的受容性の醸成に取り組めたことは、関係者が2020年までに1つの成果を出すという強い想いがあったからであろう。イベントはフィジカルとオンラインのハイブリッド版で開催されているので、そのアーカイブを見ることができる。
第2期で掲げられた4つの課題
自動運転車の実用化には、さらに高度な技術や基準策定が必要となるが、「SIP-adus」第2期では2019年から臨海部における実証実験が実施され、国内外の⾃動⾞メーカー、⾃動⾞部品メーカー、⼤学等計29機関が参画していた。
さらに研究開発のメインテーマとして、「交通環境情報の構築と発信」「仮想空間での安全性評価環境の構築(DIVP)」「サイバーセキュリティの評価基準の確立」、そして「地図系データの流通ポータルの構築」の4つを重要課題として掲げている。ここではもう少し詳しく見てみよう。
まず1つ目の課題である「交通環境情報の構築と発信」では、リアルな空間とサイバー空間を高度に融合させたIoTの実現として、データ連携の仕組みが求められている。
なかでも人やモノの動きをとらえることができるモビリティ分野の「交通環境情報」は、各分野での活用が期待されている。そのニーズに応えるために、交通環境情報を活用したデータやサービスを組み合わせることで、新しい価値やサービスを創出し社会課題を解決する仕組みが構築できるわけだ。
2つ目の課題は、仮想空間における安全性評価。これはDIVP(Driving Intelligence Validation Platform)と呼ばれ、性質が異なるセンサーをフュージョンしながらサイバー空間で評価するものだ。
自動運転に欠かせないカメラ、ミリ波レーダー、ライダーなどのセンサーを、客観的に安全性を証明するツールはあまり存在しない。そこで世界初の試みとして、センサーメーカー各社が連携しながら、正確に安全性が評価できるプロジェクトとして期待されている。
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