楽天・エアアジア連合、仁義なき乗員奪取作戦 独自入手資料が物語る、パイロット引き抜きの秘策

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国の認定を受けてパイロットの社内審査・試験ができる「査察操縦士」には2400万円。フライトシミュレーターで訓練ができる教官には2280万円。同乗飛行による訓練ができる教官には2160万円。この資料がエアアジアの「報酬提案」として、日本の大手航空会社のパイロットの間で出回っているのだ。

この金額について、ある現役パイロットは、「全日本空輸(ANA)の有資格者と遜色ない給与水準」と証言する。日本航空(JAL)は経営破綻によって従業員の給与水準が以前より下がったとされる。つまり現在、日本のパイロットで最も高給とされるANAと同等という提案は、「JAL系の人材にとって魅力に映るかもしれない」(同)。

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会見に臨んだ小田切社長(左から3人目)、フェルナンデスCEO(同4人目)、三木谷会長兼社長(同5人目)

かねてからパイロット不足が指摘されてきた、日本の航空業界。すでに、ANA系の“和製LCC”であるピーチ・アビエーションとバニラエアは、機長不足を理由に大量欠航を出している。

複数の業界関係者が「(同じくLCCの)ジェットスター・ジャパンがかなりの好条件でライバルからパイロットを引き抜いている」と口をそろえるように、パイロット争奪戦は日に日に激しさを増している。

1日の会見でも、エアアジア・ジャパンの小田切義憲社長は、「他社で乗っている人を中心にリクルートする。が、それだけでは追いつかないので、操縦士の自社育成にも取り組んでいく」と言及。破格の条件を出して、査察操縦士や教官の確保に動いているものとみられる。

LCC初の羽田ハブ構想

エアアジアがその先に見据えるのは、先行する和製LCCがどこもなしえていない、羽田空港をハブ(拠点空港)にした国内線網の展開だ。小田切社長も「マーケットの大きさやインバウンド(訪日外国人)需要を考えると、東京は外せない。発着枠の問題があり、現状は空きスロットがないが、(いずれは)羽田空港を拠点に就航したい」と色気を隠さない。

羽田空港の国内線発着枠は上限に達しており、現在利用できるのはJAL、ANA、スカイマーク、スターフライヤー、スカイネットアジア航空、AIRDO、日本トランスオーシャン航空に限られている。だが当てはある。これまで騒音を理由に認められてこなかった都心上空の飛行解禁に関する議論が始まったからだ。

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