LCCで初歩的ミスが相次ぐワケ ジェットスター、エアアジアで検査漏れが判明

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検査漏れによる欠航が相次げば、客足も遠のきかねない

格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンとエアアジア・ジャパン(11月にバニラ・エアへ社名変更)は10月9日、国土交通省が求めている定期検査の一部を実施していなかったとして、同省から厳重注意を受けた。

LCC2社が指摘されたのは、水平尾翼を動かす装置に関する定期検査の一部を行わないまま、最大8カ月にわたって運航を続けていた点。この検査は、国交省が2008年に発行した耐空性改善通報(TCD)で各航空会社に求めていたものだ。ジェットスターは9月29日に7機、エアアジアは10月1日に3機の検査漏れが判明した。エアアジアに関しては運航に影響はなかったが、ジェットスターは9月30日に予定していた全68便のうち、18便が再点検のために欠航となった。

「思い込み」がミスの原因

なぜこうした事態が起きたのか。両社に共通する言い分はヒューマンエラー(人為的なミス)だ。

本来であれば、TCDに基づいて航空機メーカーが作成した改善指示書(SB)に沿って、点検箇所の全体目視と詳細な目視点検の2段階を経る必要があった。ところが、LCC2社が作成した社内向けの整備指示書は、航空機メーカーが発行したメンテナンス・マニュアル(AMM)に従う形で、詳細な目視点検の一部項目を記載していなかった。SBとAMMを十分に突き合わせていれば防げたかもしれないミスだが、「SBの記述は複雑で、平易な英語で書かれているAMMに依拠してしまった。どちらも同じ内容が書かれているという思い込み、ヒューマンエラーがあった」(ジェットスター・ジャパンの佐髙圭太・整備本部長)。

ジェットスターによる整備関連のミスは、今回が初めてではない。昨年11月にも、業務規定の社内基準を満たさない整備士2人を責任者に選任していたとして、国土交通省から厳重注意の処分を受けた。同社は効率的な機材の運用を狙い、昨年のうちに関西国際空港を成田国際空港に次ぐ第2の拠点とする予定だったが、この厳重注意を受けて計画を延期。オペレーションが複雑になる2拠点体制に移行する前に、成田空港での定時・安全運航に集中する方針を示していたが、今回、ミスは再び起きてしまった。

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