橋下徹「ベーシックインカムがいま必要な理由」 金持ちにはいったん支給して「税金で回収」せよ
だからこその、ベーシックインカムだ。これは年齢も所得も資産も問わず、国民に対して毎月一定額のお金を支給するという仕組みである。
一定額というのをいくらにすべきか、財源はどうするかといった議論はもちろんある。だが、すでに世界各地でベーシックインカムの社会実験は始まっており、特にコロナ禍でこれまで以上に注目を集めることになった。全員に一定額だから、所得や資産で支給額を分けるといった役所の手間も不要だ。
昔から「貧すれば鈍する」という。明日の食事も十分に食べられるかどうかわからない、生活保護も認めてもらえない、そんな状態に追い込まれている人が、高付加価値の素敵なアイデアを思いつくなんてそうそうできることではないだろう。
金銭的な不安は頭の回転を下げる
『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』(センディル・ムッライナタン、エルダー・シャフィール著、大田直子訳/早川書房)では、お金と知能テストの関係を調べた研究が紹介されている。
被験者が知能テストを受ける前に、「車に不具合があって修理に300ドルかかるが、思い切って修理すべきか、このまま乗り続けるかを経済的な事情を考えて決定せよ」という仮定のシナリオが提示される。このシナリオでの修理代金が300ドルと3000ドルの場合で結果が異なってくるというのだ。
300ドルのときは、富裕層でも貧困層でも知能テストの成績は変わらない。けれど、3000ドルと高額になると貧困層の成績ががくんと(一晩徹夜した以上に)落ちるという。要するに、お金のことが気になると頭が働かなくなるということが、科学的に実証されたということだ。
また、これはエビデンスがあるわけではないけれど、お金のストレスがなくなれば、家庭内暴力や犯罪も減ってくるんじゃないかという気もする。
自己責任で何とかしろというだけではなく、きちんと社会的な支援の仕組みを整えたほうが、社会全体の付加価値を増すことにもなるのではないだろうか。
ただし、ベーシックインカムのような仕組みを整えるためには、「金持ちまでお金をもらえるのは許せない」といった妬みのマインドを変えていく必要もあるだろう。
この点は、事務効率を高めるために、所得による区分なしに金持ちにもいったん支給し、のちに税金できっちり回収すれば問題はない。いくらでも制度設計で対応できることだ。
ウェットな地域社会は失われつつある
ゆえにドライな「公助」が必要
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