河井被告、「突然の議員辞職」にひそむ権謀術数 強い広島県民の反発、自民党への逆風回避狙う

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一方、自民党が必勝を期す参院広島再選挙は岸田文雄前政調会長が選挙戦の前線指揮官だ。広島は故池田勇人元首相以来の「宏池会(岸田派)の金城湯池」(自民幹部)で、再選挙で負ければ、「岸田氏はポスト菅レースから脱落する」(閣僚経験者)とみられている。

再選挙敗北への危機感から、岸田氏サイドもかねてから河井夫妻の早期議員辞職を求めてきた。河井被告の議員辞職表明は朗報ともみえるが、地元の自民広島県連関係者は「有権者にとって辞職は当たり前。ここまで粘ったことへの批判が強く、今さら有利になるとは思えない」と首をかしげる。

同関係者は「有権者の間では、買収資金を受け取った自民党の地方議員への批判が激しい」と肩をすくめる。たしかに、今回の買収事件では被買収議員が不起訴処分となっており、主要野党の地元県連は、統一候補擁立に当たって「被買収議員が自民候補の選挙応援をするのはおかしい」と強く牽制している。

自民党内で広がる安堵の声

そうした中、河井被告の議員辞職に伴う広島3区補選が次期衆院選に吸収されることについては、自民党本部だけでなく地元県連の間で安堵の声が広がっている。「289小選挙区の1つとなり、注目度も低くなって与党も戦いやすくなる」(自民選対)というのが理由だ。

そもそも、近年はほとんど例のない選挙での大規模買収事件で逮捕・起訴された河井夫妻を、離党を理由に議員辞職を迫らなかった菅首相や二階幹事長への批判は根強い。だからこそ、今回の河井被告の議員辞職表明にも「事件の幕引きを狙う自民党執行部の厚顔無恥の表れ」(共産党幹部)との声が出ている。

ただ、自民党幹部らの思惑通り、参院広島再選挙で自民公認候補が勝てるかどうかはなお不透明だ。河井被告に対する被告人質問は4月9日まで。4月25日の投開票日前の判決ともなれば、「選挙結果への影響は避けられない」(自民幹部)。

3月22日からのコロナ緊急事態宣言解除で、東京を始め全国的な感染再拡大の兆しは強まっている。トリプル選挙の投開票日前の第4波襲来ともなれば、「菅政権への批判で、広島も含めて自民全敗」(選挙アナリスト)の可能性も高まる。

ここにきて自民党内では「4月中の衆院解散で5月選挙」という声も出るなど、解散風が加速している。しかし、「トリプル選挙で全敗なら、解散どころか一気に菅降ろしが起こる」(自民長老)との見方も多い。今回の河井被告辞職をめぐる対応が「吉と出るか凶と出るかは、コロナも含めた今後の政局の展開次第」(同)となりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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