河井被告、「突然の議員辞職」にひそむ権謀術数 強い広島県民の反発、自民党への逆風回避狙う
一方、2人区の参院広島は、残る現職が立憲民主党所属で「改選をにらむと野党側は戦いにくい」(自民選対)ことに加え、広島は圧倒的な保守地盤でもある。当初は「自民党に勝機がある」との見方もあったが、主要野党が女性の統一候補の擁立を決めたことで、自民党内には「情勢は五分五分」との危機感が広がる。
広島県民の最大の反発は、河井夫妻が長期間にわたって議員辞職せずに多額の歳費をもらい続けていたことだ。今回、克行被告が議員辞職を表明したことで、有権者の批判はある程度和らぐとの見方もある。政界では「河井夫妻の相次ぐ議員辞職は、菅首相や二階俊博幹事長が仕向けたもので、政局運営に絡めた権謀術数の一環」(閣僚経験者)とみられている。
「他山の石」発言が大炎上
河井被告の議員辞職について、公明党の山口那津男代表は「遅いぐらいで当然のこと。政治不信を招いた責任を自らしっかり受け止めてもらいたい」と厳しい反応を示した。加藤勝信官房長官も「法相経験者の刑事裁判が行われているのは大変残念だ。国民の政治不信を招いたという批判を重く受け止めたい」と語った。
ところが、二階自民党幹事長は「党としても、こうしたことを『他山の石』としてしっかり対応していかなくてはならない」と他人事のように述べただけ。この発言はすぐさまネット上で大炎上し、共産党の小池晃書記局長は「ついに他人と自分との区別もつかなくなったのか。『他山』ではなく紛れもない『自分の山』だ」と皮肉った。
買収事件の焦点の1つは、党本部から河井陣営に振り込まれた1億5000万円という選挙資金の使途だ。もう1人の自民党公認候補の10倍に相当する金額であり、政界では「買収資金となったのは間違いない」(立憲民主幹部)との見方が支配的だ。しかし、選挙の責任者だった二階幹事長らは「使途も含め、適正に処理している」と繰り返してきた。
立憲民主党の安住淳国対委員長は「政府自民党はまず、1億5000万円の選挙資金投入の説明責任を果たすべきだ」と批判。主要野党は今後も国会の場で徹底追及を続ける方針だ。
河井被告の量刑も、案里元被告の有罪判決が確定したことで「河井被告は実質的主犯だから、実刑判決となる可能性が大きい」(司法関係者)とされている。河井被告が一転して買収を認めて議員辞職にまで踏み込んだことで「間近に迫る一審判決での情状酌量を狙ったもの」(同)と受け止められている。
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